プロも注目し、注目を浴びている フロア型モデラーである Neural DSP社の「QUAD CORTEX」。
今回は、そんな「QUAD CORTEX」の使い方の中でも「実機をコピーして使いたい!」という人向けの内容をまとめます。
なお、情報は、CorOS 2.0.0時点でのものになっています。
質問がありましたら、遠慮なくどうぞ!
Quad Cortex のキャプチャー機能
Quad Cortex で使用できるキャプチャー(実機のコピー)機能は「Neural Capture」という名称のものです。
Neural Capture は、AIを用いた Neural DSP社の独自技術で構築されています。ただし、キャプチャーできる実機は、「アンプ」「キャビネット」「歪系(オーバードライブ等)のエフェクター」です。空間系である「ディレイ」「モジュレーション系」「リバーブ」のエフェクターはキャプチャーできないので、注意しましょう。
Neural Captureを利用することで、デフォルトではエフェクトブロックに搭載されていない「お気に入りの『アンプ』『キャビネット』『歪み系エフェクター』」をあたかも実機を使用しているかのように、Quad Cortexのみでルーティングに組みこむこともできます。また、「希少な実機」「同じ型番でも個体差で違ってくる実機」などを他者と共有することができるのは大きなメリットでしょう。
なお、アンプやキャビネットでは、マイクを使用します。そのため、使用するマイクの「特性」「位置」なども影響してきます。キャプチャーのために使用した環境全てに対して、それぞれの音の特性を学習し、人間の知覚に合わせた自然なサウンドを高精度で再現するのです。
補足として、ファクトリープリセットでも、実機をキャプチャーした Factory Capture が存在しています。こちらでまとめていますので、ぜひ確認してみて下さい。
Neural Capture の実施方法
ここでは、実際にNeural Capture でキャプチャーを行う手順を記載していきます。
機材の接続
Neural Captureを利用する際に使用する端子は、以下の赤枠で囲まれたものになります。
「Send 1」「Send 2」「Return 1」「Return 2」には、何も接続しないようにしてください。ケーブルを接続すると、意図しないキャプチャー結果になってしまう可能性があります。
以下の接続方法は、以下になります。なお、Neural Captureを行う際のディスプレイ上にも(英語ですが)表示されます。
- 「INPUT 1」端子に、使用する楽器(ギターなど)を接続する。
- キャプチャーするサウンドを確認するために、以下のいずれかを行う。
- 「ヘッドホン」端子を利用し、ヘッドホンを接続する。
- XLR出力(「OUT1」端子 / 「OUT2」端子 / 「OUT3/4」端子)を利用し、モニタリングシステムを接続する。
- 「CAPTURE OUT」端子をキャプチャーする機器(アンプ、キャビネット、歪系エフェクター)のインプット端子に接続する。
- キャプチャーする機器の出力を、「INPUT 2」端子に接続する。
- アンプ、キャビネットの場合は、マイクを利用する必要があります。マイクを「INPUT 2」端子に接続してください。
- アンプのキャプチャーには「キャビネットの接続」と「マイクの利用」が必要です。真空管アンプからのスピーカー出力を直接QuadCortexに接続すると、双方の機材が壊れる可能性があります。
- アンプが「D.I.OUT」を装備している場合は、マイクを介さずに D.I.OUTを利用してキャプチャーを行うことが可能です。この場合は キャビネットを介さないため、純粋にアンプのサウンドをキャプチャーすることが可能です。
- 歪系エフェクターの場合は、エフェクターのアウトプット端子を「INPUT 2」端子に接続してください。
- アンプ、キャビネットの場合は、マイクを利用する必要があります。マイクを「INPUT 2」端子に接続してください。
Neural Captureでのキャプチャー処理
グリッド右上にあるメインメニューをタップし、“New Neural Capture”をタップします。
タップすると、以下の画面が表示されます。この画面で「NEXT」ボタンを押下していくことで、上記の「機材の接続方法」で記載した内容がディスプレイ上で案内されていきます。
説明を飛ばす際は、画面上部の「>>」を押下してください。また、Neural Capture を止めたい場合は「×」ボタンでグリッド画面に戻ります。
説明の案内の最終ページで「→」ボタンを押下するか、「>>」を押下すると、実際にNeural Captureを行う以下の画面に遷移します。(ここで「CONNECTION DIAGRAM」を押下すると、接続方法の説明の1ページ目に遷移します。)
この画面では 入力レベルなどを調整し、「START CAPTURE」ボタンを押下することで、キャプチャーを始めます。各パラメータの説明は以下です。
パラメーター | ページ | 説明 |
IN 1 LEVEL(ノブ) | 1 | 「INPUT 1」の入力ゲイン(楽器の入力ゲイン)を設定します。 クリップしない程度の音量に設定してください。(可能であれば-10dB以上 ) |
IN 2 LEVEL(ノブ) | 1 | 「INPUT 2」の入力ゲインを設定します。 クリップしない程度の音量に設定してください。 |
IN 1 TYPE | 1 | 入力信号を「Mic」と「Instrument」で切り替えます。 「INPUT 1」に接続したケーブルが TS(フォン)ケーブルであれば「Instrument」、XLRケーブルであれば「Mic」を選択してください。 |
IN 2 TYPE | 1 | 入力信号を「Mic」と「Instrument」で切り替えます。 「INPUT 2」に接続したケーブルが TS(フォン)ケーブルであれば「Instrument」、XLRケーブルであれば「Mic」を選択してください。 |
IN 1 LEVEL(メーター) | 1 | 「Input 1」の入力レベル(楽器の入力レベル)のメーターです。 |
IN 2 LEVEL(メーター) | 1 | 「Input 2」の入力レベルのメーターです。 |
HEADPHONE LEVEL | 1 | ヘッドホンへの出力レベルを設定します。 |
AUTO-SET | 1 | 「INPUT 1」のレベルを自動で設定します。 「INPUT 1(ノブ)」の動きが止まるまで、楽器を演奏し続ける必要があります。 |
IN 1 GROUND LIFT | 2 | 「INPUT 1」のグラウンドループから発生するノイズがある場合は、低減または除去する為に「On」にする必要があります。 |
IN 1 PHANTOM | 2 | 「INPUT 1」のファンタム電源(48V)を使用する場合は、オンにします。 「IN 1 TYPE」を「Mic」にした時にオンにしてください。 |
IN 2 GROUND LIFT | 2 | 「INPUT 2」のグラウンドループから発生するノイズがある場合は、低減または除去する為に「On」にする必要があります。 |
IN 2 PHANTOM | 2 | 「INPUT 2」ファンタム電源(48V)を使用する場合は、オンにします。 「IN 2 TYPE」を「Mic」にした時にオンにしてください。 |
「START CAPTURE」ボタンを押下すると、以下のような画面で、キャプチャー処理が始まります。
各ステップで行われている処理は、以下を参照してください。
ステップ | 説明 |
Calibration | 接続されている機器のレイテンシーを測定するステップです。 デジタル機器の場合は、レイテンシーをできるだ低く抑える必要があります。 |
Recording Signals | モデリングに使用する信号を録音するステップです。 |
Sanity Check | 録音した音の正常性を確認するステップです。 一例ですが、Sanity Checkが失敗した場合は、以下のような画面が表示されます。右側に、エラー内容が表示されるので、確認してみて下さい。 上記例では、「入力信号が検知できないか、小さすぎる」という内容です。「接続が正しいこと」や「AUTO-SET機能などを使用して 入力レベルの再設定」を行う必要があります。 |
Training | 録音した信号を基に、Neural Cortex内で エミュレートするステップです。 |
Neural Captureしたサウンドの確認
Neural Capture でのキャプチャー処理が完了すると、以下の画面になります。ここでは、接続順を変更することなく、テストを行うことが可能です。
基本的には、「CORTEX」と「REFERENCE」を切り替えてサウンドの確認を行います。「CORTEX」はキャプチャーした音、「REFERENCE」はキャプチャーする機材の音です。音量は「HEADPHONES」で調整できます。もし、再度取り直したい場合は、「START FROM SCRATCH」を押下してください。
Neural Captureしたサウンドの保存
サウンドが決まったら、最後に保存です。上記のサウンドを確認する画面で「SAVE」ボタンを押下します。すると、以下の画面が表示されます。
ここでは以下の内容を設定して「Save」ボタンを押下することで、キャプチャーしたサウンドを保存します。
- 「Save in」で、保存先を選択する
- 「NEURAL CAPTURE NAME」で保存する際の名称を入力する
- (必要であれば)「TAGS」で、タグを割り当てる
Neural Captureしたサウンドの利用
キャプチャーしたサウンド(エフェクトブロック)は、グリッド上で「Neural Capture」ブロックを設定することで利用可能です。
「Neural Capture」ブロックを選択すると、ライブラリーで、以下のアコーディオンセクションが表示されます。
- My Captures
- Factory Captures 1
- Factory Captures 2
この中から、「My Captures」のアコーディオンセクションを開き、キャプチャー(保存)したサウンドを選択することで、他のエフェクトブロックと同様に利用可能になります。
なお、Neural Capture で変更できるパラメーターは、以下になります。
パラメーター | 説明 |
GAIN | プリアンプ部のゲインを設定します。 |
BASS | サウンドのローエンド部をレベルを調整します。 |
MID | サウンドのミッドレンジ部をレベルを調整します。 |
TREBLE | サウンドのハイエンド部をレベルを調整します。 |
VOLUME | エフェクトブロックからの出力レベルを調整します。 |
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まとめ
今回は、「QUAD CORTEX」でのキャプチャー機能:Neural Captureについて記載しました。
音色作成のヒントにしていただければ、嬉しいです。