現在、様々な場面・分野でユーザーに使われている作譜ソフト「Dorico」。
かつてのFinaleに代わり、業界標準の一角を担っています。
今回はそんなDoricoの「記譜モード」の「記譜ツールボックスによる『音符ツール』『フィンガリング』『数字付き低音』『MIDI トリガー領域』の入力操作」について、紹介します。
なお、ここでは Dorico pro(ver.6) での内容に基づいた内容となっています。
音楽ツール
入力済みの音符に対して「ピッチ」や「リズム」を変更したい時は、記譜ツールボックスの「音符ツール」を利用できます。
入力方法は、キーボードを利用する「ポップオーバー」入力のみです。
操作手順
ポップオーバーでの操作手順は、以下のようになっています。
- 変更したい位置に配置されているアイテムを選択する。
- 以下のいずれかを実行し、ポップオーバーを表示する。
- 「Shift + I」を押下する。
- 記譜ツールボックスで [ポップオーバー] > [音楽ツール] のボタンを押下する。
- 「Shift + I」を押下する。
- 表示されたポップオーバーに、エントリーを入力する。
- 「Return(Enter)」キーを押下し、ポップオーバーを閉じる。
ポップオーバーの入力例
以下に、ポップオーバーで記載できるエントリーの入力例を記載します。
| 種別 | 変更内容 | 代表的なエントリー |
| 音符の追加 | 3度上 | 「3」「3rd」 |
| ↑ | 5度下 | 「-5」「-5th」 |
| ↑ | 3度上と5度上 | 「3,5」 |
| 移調 | 2度上 | 「t2」「t2nd」 |
| ↑ | 4度下 | 「t-4」「t-4th」 |
| 転回 | 最低音(最高音)を基点 | 「inv bottom(top)」 |
| ↑ | ルート音を基点 | 「inv root」 |
| ↑ | 全音階 | 「inv diatonic」「inv diat」 |
| ↑ | 半音階 | 「inv chromatic」「inv chrom」 |
| ↑ | 特定のピッチを基点 | 「inv c4」「inv bb4」「inv f#4」 |
| 反転 | 選択した声部のみでピッチとアイテムを対象 | 「rev pt voice」 |
| 回転 | 選択した音符のリズムのみ後方に3ステップ分 | 「rot rhythm -3」 |
| 繰り返し | 選択範囲に対して、選択した初めの2音のピッチを対象 | 「repeat 2 pitches」 休符の場所は、休符のままになります。 |
| マッピング | C4からEb4 | 「c4=eb4」 |
| ↑ | A♯とB♭などの異名同音をそれより低い(高い)Gに | 「a#* =G down(top)」 「*」は異名同音を含めるときに利用します。 |
| ↑ | CメジャーからCマイナー | 「c M to c m」 「[変換元のスケール] to [変換先のスケール]」が基本形です。 |
フィンガリング
入力済みの音符に対してフィンガリングを追加するには、記譜ツールボックスの「フィンガリング」が利用できます。
入力方法は、キーボードを利用する「ポップオーバー」入力のみです。
入力手順:ポップオーバー
ポップオーバーでの入力手順は、以下のようになっています。
- 以下のいずれかを実行する。
- 必要に応じて「音符入力モード」にして、音符を入力する。
- 入力したい位置に配置されているアイテムを選択する。
- 必要に応じて「音符入力モード」にして、音符を入力する。
- 以下のいずれかを実行し、ポップオーバーを表示する。
- 「Shift + F」を押下する。
- 記譜ツールボックスで [ポップオーバー] > [フィンガリング] のボタンを押下する。
- 「Shift + F」を押下する。
- 表示されたポップオーバーに、エントリーを入力する。
- 「Return(Enter)」キーを押下し、ポップオーバーを閉じる。
フレット楽器が対象の場合、手順2と3の間で以下のキーを押下して、必要に応じて表記する手を切り替えることが可能です。
- 右手:「↓」キー
- 左手:「↑」キー
ポップオーバーの入力例(除:フレット楽器)
以下に、ポップオーバーで記載できるエントリーの入力例を記載します。
| 種別 | 代表的なエントリー |
| 単一のフィンガリング | 「1」「2」など |
| バルブ式金管楽器 | 人差し指:「1」、中指:「2」、薬指:「3」 「12」「23」「13」「123」 |
| 左手のフィンガリング | 「L2」 |
| 右手のフィンガリング | 「R5」 |
| 代替フィンガリング | 2(3) |
| 替え指 | 1-3 |
| シフト指示 (弦楽器) | 2/ |
ポップオーバーの入力例(フレット楽器)
以下に、ポップオーバーで記載できるエントリーの入力例を記載します。
| 種別 | 代表的なエントリー |
| 左手のフィンガリング | 「0」「1」「2」「3」「4」「5」 |
| 右手のフィンガリング | 「p」「i」「m」「a」「e」 |
数字付き低音
数字付き低音の付与は、記譜ツールボックスの「数字付き低音」で利用できます。
入力方法は、キーボードを利用する「ポップオーバー」入力のみです。
入力手順:ポップオーバー
ポップオーバーでの入力手順は、以下のようになっています。
- 付与したい位置に配置されているアイテムを選択する。
- 以下のいずれかを実行し、ポップオーバーを表示する。
- 「Shift + G」を押下する。
- 記譜ツールボックスで [ポップオーバー] > [数字付き低音] のボタンを押下する。
- 「Shift + G」を押下する。
- 表示されたポップオーバーに、エントリーを入力する。
- 「Return(Enter)」キーを押下し、ポップオーバーを閉じる。
手順3の時、以下のいずれかでローカルとグローバルを変更することができます。
- ローカルな数字:「Alt + L」
- グローバルな数字:「Alt + G」
なお、数字付き低音の入力内容は、[浄書オプション(Ctrl + Shift + E)] > [数字付き低音] の設定に基づきます。
これをポップオーバーの入力内容のままにしたい場合は、[音符入力オプション(Ctrl + Shift + I)] > [数字付き低音] の設定を変更する必要があります。
また、入力時のナビゲーション機能として、一例を挙げます。
| 動作 | ショートカットキー |
| 次(前)の拍へ | 「(Shift + )Space」 |
| 次(前)の小節へ | 「(Shift + )Tab」 |
| 次(前)の音符へ | 「→(←)」 |
ポップオーバーの入力例
以下に、ポップオーバーで記載できるエントリーの入力例を記載します。
| 表記 | 代表的なエントリー |
| 数字(1、2、3、・・・) | 「1」「2」「3」・・・ |
| 複数の数字 | 「#6,4,2」(カンマ区切りで表記) |
| 数字の非表示 | 「<2>」「{3}」 |
| コード記号で指定 | 「Bbm」「D/G」 |
| ナチュラル | 「n(大文字も可)」 |
| ダブルシャープ | 「x」「##」「ds」 |
| トリプルフラット | 「bbb」「tb」 |
| 数字を半音上げる | 「+」 |
| 数字を半音下げる | 「-」 |
| タストソロ | 「ts」 |
| ホールドのデュレーション | 「d=2 (4分音符の数)」 |
| サスペンション | 「4_3」「4~3」 |
| 一時的に「浄書オプション」に従う | 数字の前に以下のいずれかを記載する 「r(大文字も可)」「v(大文字も可)」「?」 |
| 一時的に「入力内容」に従う | 数字の前に以下のいずれかを記載する 「o(大文字も可)」「!」 |
MIDI トリガー領域の入力
楽譜には表示されない再生用の音符を入力するには、記譜ツールボックスの「MIDI トリガー領域の入力」を利用できます。
入力方法は、キーボードを利用する「ポップオーバー」入力のみです。
入力手順:ポップオーバー
ポップオーバーでの入力手順は、以下のようになっています。
- 以下のいずれかを実行する。
- 「音符入力モード」にする。
- 入力したい位置に配置されているアイテムを選択する。
- 「音符入力モード」にする。
- 以下のいずれかを実行し、ポップオーバーを表示する。
- 「Shift + 0」を押下する。
- 記譜ツールボックスで [ポップオーバー] > [MIDI トリガー領域の入力] のボタンを押下する。
- 「Shift + 0」を押下する。
- 表示されたポップオーバーに、エントリーを入力する。
- 「Return(Enter)」キーを押下し、ポップオーバーを閉じる。
ポップオーバーの入力例
以下に、ポップオーバーで記載できるエントリーの入力例を記載します。
| 表記 | 代表的なエントリー |
| ピッチとオクターブによる音符 | 「c4」「Eb3」「F#5」 |
| MIDIノート番号による音符 | 「60」「51」「78」 |
| ベロシティを指定する | 最後の音符の後に、以下のいずれかを記載する。 「(0)」~「(127)」 |
商品情報
まとめ
今回は、Doricoの「記譜モード」の「記譜ツールボックスによる『音符ツール』『フィンガリング』『数字付き低音』『MIDI トリガー領域』の入力操作」についてまとめてみました。
Doricoを使用する際のヒントになれば幸いです。
