【2024年10月28日版】作譜ソフトを比較してみよう!

DTMを今から始めようとする人、環境を変えようとする人。初めてであれ 経験者であれ、選ぶのは毎回迷うところだと思います。特に作譜ソフトの場合は DAWと比べて使用者も少ないため、使用者の意見も聞きにくくなると思います。

私は、Sibeliusを永久ライセンスで使用していましたが、2019年12月31日に再加入版が生産されなくなるので、改めて調べてみました。

その内容を含め、少し記載していこうと思います。

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楽譜の必要性

そもそも楽譜は必要なのでしょうか?特に自身の趣味などで曲作りしているだけであれば、必要ないのではないか?という疑問はあって当然だと思います。私も、必要性に迫られなければ不要と思います。では、なぜ楽譜が必要なのか?その理由は、以下があるのではないでしょうか?

  • 耳コピが苦手な人が真似るための手助けになる
  • 埋もれて聞き取りにくいパートを確認できる
  • フレーズや演奏パターンを正確に確認できる
  • 作曲者が意図した表現やニュアンスが分かる
  • 演奏時に暗記しなくて済む
  • クラシックのように曲を後世に残すことができる

作譜ソフトでできること

作譜ソフトでできることの一例は以下になります。

  • 楽譜の作成
  • 楽譜の印刷
  • PDF、MIDI、Music XMLなどのファイル形式でエクスポート
  • MIDI、Music XMLなどのファイルの読み込み
  • 音源を使うことで作成した楽譜を再生

上記を見ると「楽譜作成なら、DAWでも良いじゃないか。」と思う方もいるかと思います。しかし、DAWの作譜機能には限界があります。DAWでは、「ボーカルの楽譜が作成しにくい」「パートが増えてくると読みにくい」「楽曲全体を通した演奏と楽譜を見比べたい」「音符以外の記号が表現が難しい」「表現の幅が狭い」などの問題が出てきます。

どんな作譜ソフトがあるの?

フリーのものも含めれば非常に多くの作譜ソフトが存在しますが、有料版の代表格的な4種を以下にまとめます。

名称
メーカー
対応OSエディション最新Ver体験版購入方法(代表例)
Finale
MI7
Windows
Mac
無印27・PrintMusicの30日試用版
・Notepad
・販売終了(2024/08/26)
Sibelius
Avid
Windows
Mac
iPad
Ultimate
Artist
First
2024.10・Ultimateのトライアル版
・First
・永久ライセンス
・月額サブスク(月払い)
・1年サブスク(月払い)
・1年サブスク(年払い)
※各々にアカデミック版あり
Dorico
Steinberg
Windows
Mac
Pro
Elements
SE
iPad
5・双方の30日試用版・フルバージョン
・クロスグレード
・アカデミック
・アップデート&アップグレード
Notion
Presonus
Windows
Mac
通常版6・機能制限版・フルバージョン
※Studio Oneとのセット品あり

また、個人的な考えも入れて、志向別でおすすめ品をざっくりまとめます。

ニーズ推奨ソフトと理由
浄書・出版用
きれいな楽譜を仕上げたい
Dorico
各作業に応じたモードがある。
DAWの感覚で使ってみたいDorico
再生モードが、DAWのようなUIで、ピアノロール表示が可能
Protoolsを使用しているSibelius
連携が素晴らしい。
シンプルな操作で使いたい
Sibelius
Officeのようなリボン、テンキーなどを駆使した操作が可能
演奏用
レイアウトに拘らない
Sibeius
厳密な要求に応える必要がなければ、十分。
Studio Oneを使用しているNotion
連携が素晴らしい。

Finaleの販売終了について

Finaleは、開発/販売元であるMakeMusic社が、米国時間2024年8月26日に開発/販売終了をアナウンスしました。(リンク
すでにインストール済みのFinaleは、そのまま利用できますが、新規PCに移行するようなことが発生した場合は、利用ができません。
MakeMusic社としては、移行先としてSteinbergと提携し、Dorico Proを特別価格(20,900円)で購入できるようです。(リンク

なお、Sibeliusも同様に、以下のキャンペーンを行っています。(リンク

  • 1 年間のアップデートを含む永久ライセンス(20,900円)
  • 年間サブスクリプション ( 2 年間は特別価格で、13,900円。その後は 27,900円)
Finaleからの譜面の移行について
ツール移行について問題になるのは、譜面データの移行作業ではないでしょうか?
この点では、作譜ソフトで共通するデータ形式の「MuiscXML」を使用すれば問題ないと思います。
Finale上で「MuiscXML」形式でエクスポートし、移行先のソフトで「MuiscXML」をインポートしてください。
ただし、いずれのソフトも完全再現は難しく、「レイアウト」「連桁」「繰り返し記号」「補助的な記号(タイ、括り、アクセント等)」などで違いが出てきます。
そのため、読み込み後に微調整は必要になってくるかと思います。
事前に、Finaleの譜面をPDFなどで出力しておくと良いかもしれません。

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どれを選べば良いの?

Finaleが終了となった今、現状ではDorico と Sibeliusのほぼ2強の状態にあります。この2つはどちらもできることの根本は変わりません。ただし、目的の差異、連携製品の有無、使い勝手が全く異なってくるので、好みが完全に分かれます。

以下では、「選ぶ基準の例」と上記の4つの作譜ソフトについて まとめます。

選ぶ基準

基準として、以下の点が明確であるか?重要と考えるか?を考えてみて下さい。

項目補足
目的単に作ることが目的か、綺麗なレイアウトに保つことが必須かです。
学びやすさ特に初心者には、参考書やネットでの情報源の多さが1つの基準になると思います。
連携製品連携機能の有無があるので1つの基準になると思います。

作譜ソフトの特徴

ここからは、各作譜ソフトの特徴の一例について説明していきます。

Finaleシリーズ

Finaleシリーズの特徴は、以下になります。

前述のとおり、本製品は開発/販売終了となっています。
そのため、参考として掲載しています。
項目特徴
目的オーケストラ規模の楽譜作成、浄書、出版
学びやすさ多くの参考書が存在します。出版業界で長く使用されていることから、インターネットでも多くの情報を得られます。
また購入の際は、「ガイドブック付属版」もあります。
連携製品ありません。。。

楽譜出版業界では、何年も前から今まで業界スタンダードのソフトとして、君臨し続けています。Finaleでできないことはないと言われるほどで、少し前まではFinaleの独り勝ちの状況でした。

向き不向きで言うと、搭載されている音源などオーケストラ向けの内容になっているのが実情。現代音楽(ポップスなど)やバンド音楽については、難しく感じる所が出てくると思います。

以上より、このソフトでは「考えて曲を作る」のではなく、本当の意味で「楽譜を作成するためのツール」であると思います。

また、作譜のフローですが、非常に独特なものになっています。昔からあるため、機能は豊富です。

しかし、機能の後乗せを繰り返しているためか「やりたいことを行うまでのステップが長い、分かりにくい」ということもあります。

Sibeliusシリーズ

Sibelius シリーズの特徴は、以下になります。

項目特徴
目的音楽全般の楽譜作成(付属音源はオーケストラ寄り)
学びやすさ多くの参考書やインターネットでの情報源があります。
連携製品Protools(同社のDAW)
・PhotoScore(楽譜スキャニングツール)
・AudioScore(音声認識ツール)
・Avid Scorch(iPadアプリ)

※PhotoScore、AudioScoreは、同梱されているバンドル版も存在します。

Finaleと比べると日本のシェアはまだ少ないですが、国内外の多くの業界で使われています。Sibelius の特記すべきは、「Protoolsとの相性」「作譜のスピーディーさ」だと思います。

Protoolsの譜面エディタのデータをシームレスにSibeliusで読み込み可能です。MIDI形式などでエクスポートすることなく、Sibeliusで開いて編集可能になります!(具体的には、譜面エディタで表示させているパートの譜面に対し「Sibeliusへ送る」を実行するだけです。)この機能は、業界の中でも非常に重宝されています。

また、MIDIデータのコピペも簡単にできます。Sibelius ⇒ ProToolsはクリップボードを利用しますが、ProTools ⇒ Sibeliusの場合はコピー対象(クリップなど)をCtrl + Cなどでコピーしてしまえば良いです。

このProToolsとの連携部分が、Sibeliusを選ぶ最大のメリットかもしれません。

作譜のフローについては、先述のFinaleの後発ソフトだけあって、比較的見やすい楽譜を素早く作成することが可能です。Finaleと比べると、行いたいことに到着するまでの時間が圧倒的にこちらの方が早いです。メニューはMicrosoft Officeと同様のリボン表示を採用し、基本機能はほぼ迷わずに作成することが可能です。パートの追加削除・変更、譜面の改行・改ページなどはリボンの中に大きなボタンで存在しています。また、準備の手間はありますが「テキストファイルからの歌詞入力」や「五線譜に記載された構成音からの自動コード判別」なども非常に便利です。テンキーによる音符や音楽記号の切り替えも可能です。

現在の機能としては、Finaleと遜色なく争えるレベルだと考えます。

加えて、2021/07に、Sibelius for mobile がリリースされました。iPad の Apple Storeでのみ、購入が可能(参考URLは、こちら)です。また、デスクトップと同様のラインナップで アプリにも3つのSibeliusのバージョンがあります。Sibelius | Firstはどなたでも無料で利用できます。各シリーズの比較は 簡易版詳細版があるので、参考にしてみて下さい。

2024/10:最新バージョンについて

今回の更新の目玉は、ProToolsとの連携強化に尽きます。

  • MusicXML改善点
    • Finale、Doricoといった他の作譜ソフトからのスコアの移行時の、元のスコアのレイアウトの再現性向上。
      • マルチレスト、楽器名、パート名をより確実に認識
      • ページと譜表の余白がより正確に
    • 既存の Sibelius テンプレートに MusicXML ファイルをインポート可能。
  •  新しいグリッサンドの作成機能
    • グリッサンド作成時に、開始音符~最終音符の区間を一連の音符に置き換えます。
  • macOS Sequoia のサポート

その他にも、様々なバグ修正を初め、ユーザーからの数多くの要望にも応えて改善が進んでいます。

※アップデートの詳細は、こちら

※動作環境の詳細は、こちら

Protoolsとの連携がすばらしく、シンプルな操作で作譜

Doricoシリーズ

Doricoの特徴は、以下になります。

連携製品ありません。

項目特徴
目的音楽全般の楽譜作成(HALion Symphonic Orchestraが付属)
学びやすさ参考書もインターネットでの情報源も少ないです。

※参考書は、大きく2種類のみの気がしています。(リンクしか見たことがありません。

こちらは、後発ゆえ上記の3つと比べて全体的には劣るところが目立ち、もう1歩が欲しい箇所が散在しています。Tab譜対応もバージョン3でようやく対応されました。バージョン3.5では、ギターのテクニックである「ハンマリング」「プリング」「タッピング」を記載できるようになりました。徐々に他の作譜ソフトに近づいている印象です。

本開発にはSibeliusの主要開発者の一部が移籍して作成しているとのことで、他の作譜ソフトよりも直感的な操作が行いやすくなっています。

Doricoでは、目的に応じて5つのモード「設定/記譜/浄書/再生/印刷」が存在します。このモードはDoricoの一番の特徴かもしれません。

これにより、各作業に最適なレイアウトで作業ができるというのが、Doricoを選ぶ最大のメリットかもしれません。

また、現時点では、同社のDAW:Cubaseを始め、他のソフトとの連携機能はありません。Cubaseとの連携ができれば、ユーザー数も激増する想像は難しくないので、早く対応してほしいところです。

2023/07/01:最新バージョンについて
Dorico 5 が最新バージョンとしてリリースされています。
主な新機能・改善点は以下です。
  • 楽曲を演奏する場所や空間の配置をシミュレートしたテンプレートを多数に搭載
  • フレーズの音高に応じてダイナミクスを自動的に調整
  • Groove Agent SEを搭載
  • MIDI トリガーリージョン機能の進化によるスラッシュ表記。
  • スクラブ再生が可能に
  • 楽器編集機能の強化
  • MusicXML への対応を強化

※アップデートの詳細は、こちら

※ライセンスシステムの詳細はこちら

各作業に最適なモードで作譜。出版用に最適。

Notion

Notion の特徴は、以下になります。

項目特徴
目的音楽全般の楽譜作成(音源は邦楽寄りのものも存在)
学びやすさ多くの参考書やインターネットでの情報源があります。
連携製品Studio One(同社のDAW)
iOS用Notionアプリ
※Studio Oneとのバンドル品も存在します。

こちらは、譜面作成ツールというよりは、DAWの譜面作成機能特化版のようなイメージです。Notionで特記すべきは「iOS用アプリの存在」「Studio Oneとの連携」でしょう。

iOS用アプリを使用することで、今回記載する作譜ソフトの中では唯一PC外でのスコアを作成、転送などの作業を時間・場所に縛られることなく行うこともできます。

DAWとの連携については、Stuidio Oneのファイル形式でエクスポートが可能です。

また、作譜ソフトの中では、非常に安価な部類に入ります。楽譜作成の頻度が高いと予想されるオーケストラに寄り過ぎたものではないということも利点かもしれません。

まとめ

楽器屋の店員に訊いても、作譜ソフトを使用しない人が大多数でした。後発のDoricoを含め、いずれの作譜ソフトも遜色なく使えるようになってきました。

とはいえ、使い勝手/向き不向きは必ずあるので、検討している方は、まず体験版(無料版)で試してみてください。

一番は、自身が使いやすいかどうかなので、実際に体験してから購入を検討してみましょう。

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