【参考情報】UAのプリアンプ「4-710D」の使い方~基本的な使い方~

多くのエンジニアやミュージシャンに愛用されるメーカーの Universal Audio社から発売されているプリアンプ:4-710D。

レコーディング機材として人気も高く、あらゆる楽器に対して有効な機材です。

今回は、そんなプリアンプ「4-710D」の基本的な使い方についてまとめてみます。

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基本的な使い方

基本的な使い方としては、以下の流れになるかと思います。

  1. 電源、各種コントロール(ファンタム電源など)がOFFの状態であることを確認する
  2. POLARITYが「INΦ」であることを確認する
  3. 後段の機材を 出力端子(LINE OUT)にXLRケーブルで接続する
    • ミキサー、オーディオインターフェース、アンプなど
  4. 以下のいずれかの方法で、前段の機材を入力端子に接続する
    • ギターやベースの直挿し/エフェクターの出力を接続する場合は、通常のシールド(TSケーブル)で前面の「HI-Z端子」に接続
    • コンデンサーマイクのようなファンタム電源を要する機材の出力を本機に入力する場合は、必ずXLRケーブルで背面の「MIC IN」に接続
    • バランス出力するけどファンタム電源が不要な機材からの出力を本機に入力する場合は、XLRケーブルで背面の「LINE IN」もしくは「MIC IN」に接続
  5. 入力する機材(使用したい端子)に応じて、前面のVUメーターの左下にあるスイッチで入力ソースを切り替える
  6. 基本的な音質を得るために、以下のパラメータに設定する
    • Gain:0
    • BLEND:12時
    • LEVEL:5
  7. 電源ケーブルを挿入し、電源を投入する
  8. ファンタム電源が必要な場合は、「+48Vスイッチ」を「ON」にする
  9. VUメーターも利用して、「GAIN」「BLEND」「LEVEL」を調整し、最適な入力出力を得られる設定にする

前面のコントロール

前面には、以下のようなコントロールが装備されています。それぞれについて、以下で説明していきます。

なお、上図の「②」から「⑬」については、1chから4chまで共通の内容となっています。①~⑬はアナログ制御部で、⑭~⑲はでじ

①HI-Z 1 ~ 4

ギター、ベース、エフェクターなどの出力を使用する際にハイインピーダンス仕様の機材を接続する際に使用する端子です。フォン端子のケーブル(TSケーブル)で接続することになります。

なお、入力インピーダンスは、2.2MΩとなっています。俗に言う「ロー出しハイ受け」の理論に則ることになるので、高周波成分の損失を防ぐ働きを持ちます。

前面の「HI-Z」にケーブルを挿した場合、後述する背面の「LINE IN」「MIC IN」は無効になります。

②+48V

ファンタム電源で、「ON(上側)」にすると、背面にある「MIC IN」に48Vが供給されます。供給には「PIN2」「PIN3」を経由します。

MICファンタム電源を要するコンデンサーマイクなどの機材を使用する場合に、「ON」にしてください。

ファンタム電源が不要な機材を扱う場合は、必ず「OFF」にする必要があります。「ON」にしたままだと、接続した機材に対して故障などの問題につながる場合があるので、基本的には「OFF」にしておきましょう。

また、「MIC IN」でのXLRケーブルの抜き差し時は、必ず「OFF」にしてください。

③-15dB PAD

背面の「MIC IN」への入力信号が、15dBカットされます。「MIC IN」の入力に対して、「GAIN」に届く前に装備されています。

「『GAIN』を低く抑えても歪んでしまう」と言った状態になってしまった場合は、こちらを「15dB PAD(上側)」の方に切り替えて下さい。

前面の「HI-Z」、背面の「LINE IN」に対しては無効です。

④Input Select

入力ソースの切り替えができます。ファンタム電源が装備されている「MIC(上側)」かファンタム電源が装備されていない「LINE(下側)」かを選択します。

なお、対応するチャンネルの「HI-Z」に入力が刺さっている場合は、いずれを選択しても無効の設定です。「HI-Z」が有効になります。

⑤Meter

VUメーターです。

「Meter Function(後述)」で設定された内容の値を表示します。

「Meter Function」が「MTR OUT」の時は、単位は[dB]となります。「0」はアナログ出力(背面の「LINE OUT」のレベル)で「+4dBu」、デジタル制御部への入力で「-16dBFS」の状態です。

「Meter Function」が「DRIVE」の時は、「0」の時に「1.2%THD」、「-10」の時に「0.4%THD」になるように設定されているようです。

⑥Low Cut

75Hz(固定)のローカットフィルターです。低周波ノイズのカットに有効です。

「LOW CUT(上側)」にすると ローカットフィルターを通るようになります。

⑦Meter Function

VUメータに表示する内容を切り替えます。

スイッチの位置説明
MTR OUT(上側)出力レベルです。
GR(中央)コンプ部でのゲインリダクション(Gain Reduction)の値です。

基準となる位置は「0」で、コンプが有効な時に機能します。

DRIVE(下側)GAIN回路を通過し、チューブプリアンプ部へ入力されるレベルです。

⑧Polarity

極性を設定します。複数のマイクで1つの音源(アコギやスネアドラムなど)を録音するような場合に、片方を「OUTΦ(上側)」にして位相を反転させると良いでしょう。

複数のマイクで1つの音源を録音する場合は、双方のマイクで録音した音を打ち消し合ってしまう場合があります。こういった場合に有効な設定です。通常は「INΦ(下側)」で問題ありません。

なお、極性変換の対象となるのは、アナログ出力(背面の「LINE OUT」)と、デジタル制御部への入力です。「INΦ」の時は PIN2 がプラス(+)になり、「OUTΦ」の時は PIN3 がプラス(+)になります。

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⑨Gain

各チャンネルのインプットゲイン(入力レベル)を設定します。時計周りに回すことで、ゲインも上がります。

Blendやコンプレッサーの前段に位置しているので、適度な歪みやコンプの効き具合に影響を及ぼします。

⑩Insert

「IN(上側)」にすることで、背面の「SEND」「RETURN」の端子を利用し、外部機材を利用することができます。「OUT(下側)」にすると、「SEND」「RETURN」の端子は無効になります。

なお、「SEND」に出力される信号は、「LINE OUT」の信号と同じです。そのため、通常のシールド(TSケーブル)で出力したい場合などは、「IN(上側)」にして「SEND」から出力するのも1つの方法かと思います。

⑪Blend

真空管を使用しないソリッドステートの回路と、真空管を使用するチューブプリアンプ回路のMIX具合を設定します。12時の位置では、1:1(互いに50%)の割合でMIXされます。

反時計周り方向でソリッドステート回路の割合が強くなり、目一杯振り切るとソリッドステート回路だけの音色になります。

逆に、時計周り方向でチューブプリアンプ回路の割合が強くなり、目一杯振り切るとチューブプリアンプ回路だけの音色になります。

⑫Comp

「Comp」は、新規で設計された1176タイプのアナログコンプレッサーになっています。無効にする「OFF(中央)」と、有効にする「FAST(下側)」「SLOW(上側)」から選択できます。

「FAST(下側)」「SLOW(上側)」の違いは、固定値となっているアタックとリリースの値です。「FAST(下側)」では、アタックが「0.3ms」でリリースが「100ms」となります。「SLOW(上側)」では、アタックが「2ms」でリリースが「1100ms」です。

⑬Level

各チャンネルのアウトプットレベル(マスターボリューム)を設定します。時計周りに回すことで、レベルも上がります。

アナログ制御部の最終段に位置しているので、背面の「LINE OUT」からの出力、もしくはデジタル制御部(A/Dコンバーター)への入力信号になります。

⑭Digital Out Level

A/Dコンバーターの出力信号レベルを示しています。インジケーターは、2つです。

下のLEDは信号が流れると「緑色」で点灯し、-37dBFS から -6dBFS の範囲内であることを示しています。上のLEDは信号が流れると「黄色」か「赤色」で点灯します。「黄色」の場合は -6dBFS から -1dBFS の範囲内であることを示し、「赤色」の場合は -1dBFS を超えていることを示しています。

⑮Bit Depth

デジタル制御部の出力に対するビット深度を「24bit」「16bit」から選択します。

4-710の内部では基本的に「24bit」で処理されています。そのため、三角波によるディザリング処理が成されます。

ディザリングとは、微量のノイズを信号に与えることで、ビット深度を変更した際に生じる「データの欠損によるエラー」を防ぐための処理を指します。

⑯Power

4-710本体の電源スイッチです。「ON」した場合、「VUメーター」の明かりが点灯します。

⑰Limit 1-8

内蔵のアナログリミッターを有効にさせます。

リミッターの場所はA/Dコンバーターの直前で、全てのチャンネルのデジタル出力に対して機能します。チャンネル毎のリミッターの有効・無効の切り替えはできません。

なお、リミッターの仕様は以下の通りです。デジタルクリップを防ぐための設定値になっています。

項目固定値
スレショルド17dBu(-3dBFS)
レシオ
アタック0.075ms
リリース100ms

⑱Sample Rate

A/Dコンバーターの「内部のサンプルレート」および「外部クロックとの同期」の設定をします。

設定値は「44.1kHz」「48kHz」「88.2kHz」「96kHz」「176.4kHz」「192kHz」「W/C」から選択できます。

「W/C」については、4-710D本体で設定するのではなく、背面の「WORD CLOCK」の「IN」端子に接続された機器から得た情報に従います。

ただし、外部クロックを使用する際は、「44.1kHz」「48kHz」「88.2kHz」「96kHz」「176.4kHz」「192kHz」のいずれかの「±3%」の誤差の範囲内に収まっている必要があります。この範囲に収まっていない場合は、「WORD CLOCK」の「OUT」は 48kHz で動作するようになります。デジタル出力は 48kHz での動作となることに加え、ミュートされます。

⑲Lock

4-710D本体が、外部のクロックソースと同期しているかどうかを示すLEDです。そのため、「Sample Rate」が「W/C」の時に効果を発揮するLEDです。

同期した場合は「緑色」で点灯し、同期していない(できない)場合は「赤色」に点灯します。

「Sample Rate」が「W/C」ではない設定値の場合は、常に「緑色」で点灯します。

商品リンク

4chの「マイクプリアンプ」「コンプレッサー」と8chの「A/Dコンバーター」を搭載したレコーディング機材

まとめ

今回は、Universal Audio社の「4-710D」の基本的な使い方について記載しました。

ボーカル、ギター、ベース、ドラム(パーカッション)など、あらゆる楽器に対して、利用できる優れものです。

価格も高騰していますが、おすすめできる機材ですので、ぜひ機会があれば試してみてください。

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