電子ドラムでは生ドラムほどスペースを要さない上、キットの構成も柔軟に対応できます。
そのため、「パッドを増設し、オリジナルの構成のキットを作りたい」「色んな環境下を想定した音響設定に変更したい」と言った要求が出てくることがあるかもしれません。
今回は、そんな時に役立つ「パッドの設定変更」のうち、必要に応じて行うようなものについて触れていこうと思います。
トリガーの設定(必要に応じて)
ここでは、以下のような場合に、役立つ内容を記載します。
- トリガー・インプットの紐づけた設定から、さらに微調整を加えたい時
- パッドが、誤動作している時
パッドの感度を個別に調整する
パッド毎に感度の調整をする場合に、行う手順です。
- 「TRIGGER」ボタンを押下する。
- 1ページ目が表示されていない場合は、PAGE「UP」ボタンを数回押してください。
- 「F3」ボタン(SENS)を押下する。
- TRIGGER SENS 画面が表示されます。
- 設定するパッドを選択する。
- カーソル・ボタンもしくはパッドを叩いて選んでください。
- カーソル・ボタンで変更したいパラメータを選択する。
- 設定値をを変更する。
- 「―」「+」ボタン もしくは ダイヤルを使用します。
- ディスプレイの左端に表示されるベロシティー・メーターで、叩いた強さを確認することができます。
参考情報として、TRIGGER SENS 画面でのトリガー・インプットが示しているパッドの種類を以下にまとめておきます。
表示 | パッド |
K | KICK |
S | SNARE |
T | TOM1、TOM2、TOM3、TOM4 |
H | HI-HAT |
C | CRASH1、2 |
R | RIDE |
A | AUX1、AUX2、AUX3、AUX4 |
また、手順2で開く「SENS」タブで設定できるパラメータは、以下にまとめます。
パラメータ | 設定値 | 説明 |
Sensitivity | 1.0~32.0 | 叩く強さと音量のバランスを調節します。 値:大 値:小 |
Rim Gain | 0~3.2 | リムやエッジを叩く強さと音の大きさのバランスを調節します。リム・ショット奏法に対応したパッドで有効です。 値:大 値:小 |
Global Sens | LOW、NORMAL、HIGH | ドラム・キットの全パッドの感度を一括調整します。トリガー・バンクごとに設定できます。 【LOW】 【HIGH】 |
※上記設定の内容は、「F5」ボタン(DEFAULT)を押下することで初期値に戻すことができます。ただし、一部の初期化されないパラメータも存在します。
トリガーを細かく設定する
パッドの感度の詳細設定、信号の検出、打点位置の検出など、より細かい調節をしたい場合はこの手順を行ってください。
手順は以下です。
- 「TRIGGER」ボタンを押下する。
- PAGE[UP][DOWN]ボタンを使用し、2 ページ(TRIG ADVANCED)を表示させる。
- トリガー・アドバンスド画面が表示されます。
- 設定する項目を選択する。
- 設定するパッドを選択する。
- カーソル・ボタンもしくはパッドを叩いて選んでください。
- カーソル・ボタンでパラメータを選択する
- 「-」「+」ボタンまたはダイヤルで、設定値を変更する。
なお、手順3で、設定可能な項目は以下になります。
タブ | ボタン | 項目 | 設定値 | 説明 |
THRESHOLD | F1 | ーー | ーー | パッドの感度の詳細設定をします。 |
Trig Type | ーー | Trig Type 設定できます。(BANK タブと共通) | ||
Threshold | 0~31 | パッドの最低感度です。 叩かれたと認識する強さを設定するイメージです。 | ||
Curve |
| パッドの叩く強さに対する音量変化です。 【LINEAR】 【EXP1、EXP2】 【LOG1、LOG2】 【SPLINE】 【LOUD1、LOUD2】 | ||
ExtNoiseCancel | ーー | Trig Type に、ノイズキャンセリング機能に対応しているROLAND製のドラム・トリガー(単体商品)を選んだときのみ利用できる設定のため、通常は使用しません。 トリガーが付いていない生ドラムや生のパ-カッションなどを叩いたときに、トリガーが叩かれたと誤検知することを防ぎます。 | ||
RIM | F2 | ーー | ーー | リム・ショットの詳細設定をします。 |
Trig Type | ーー | Trig Type 設定できます。(BANK タブと共通) | ||
Head/Rim Adjust | 0~80 | ヘッド・ショットとリム・ショットの鳴りやすさです。非対応のパッドも存在します。 極端な設定だと「どこを叩いても、ヘッドもしくはリムしかならない」という現象が発生します。 値:大 値:小 | ||
XStick Threshold | 0~127 | リムを叩いた時のオープン・リム・ショット音とクロス・スティック音が切り替わるしきい値を設定します。非対応のパッドも存在します。 しきい値より弱く叩けばクロススティック、強くたたけばリムショットになります。 値:大 値:0 | ||
SCAN | F3 | ーー | ーー | トリガー信号の検出の詳細設定をします。 |
Trig Type | ーー | Trig Type 設定できます。(BANK タブと共通) | ||
Scan Time | 0~4.0ms | トリガー信号を検出させる時間です。 パッドを同じ強さで叩きながら、値を「0」から上げていき、一番大きな音量が安定して得られる場所を値に設定します。 ただし、値が大きいほど音がなるまでの時間が長くなります。そのため、遅延が発生するので、注意が必要です。 | ||
Mask Time | 0~64ms | 一度音が鳴った後に音を検出を無効にする時間を設定します。 これにより、意図せず2度パッドに触れてしまうことで発生する2度鳴りの抑制に役立ちます。 しかし、値が大きいほど細かい連打したときに音が漏れる可能性が出てくるデメリットがあります。 | ||
Retrigger Cancel | 1~16 | トリガー信号の減衰の検出です。 主に波形の乱れが要因の「パッドを1度しか叩いていないのに2回以上音が鳴ってしまう(リトリガー)」と言った誤動作を防ぎます。 値が大きいほどリトリガーの発生は抑えられますが、弱く細かい連打したときに音が漏れる可能性が出てくるデメリットがあります。 | ||
POSITION | F4 | ーー | ーー | 打点位置検出の詳細設定をします。 |
Trig Type | ーー | Trig Type 設定できます。(BANK タブと共通) | ||
Position Detect |
| 打点位置検出のオン/オフ設定です。位置検出に対応しているパッドでのみ設定可能になっています。 打点位置検出をオンにすると、ヘッドの打点位置、または、リム・ショットのニュアンスによる音色変化が得られます。 ヘッドとリムの打点位置検出:ON/OFFは、個別に設定可能です。 |
※上記設定の内容は、「F5」ボタン(DEFAULT)を押下することで初期値に戻すことができます。ただし、一部の初期化されないパラメータも存在します。
デジタル接続対応パッドを細かく設定する
デジタル接続対応パッドに対し、より細かい調節をしたい場合はこの手順を行ってください。
手順は以下です。
- 「TRIGGER」ボタンを押下する。
- 1ページ目が表示されていない場合は、PAGE「UP」ボタンを数回押してください。
- 「F2」ボタン(DIGITAL)を押下する。
- 「F5」ボタン(ADVANCED)を押下する。
- DIGITAL TRIGGER ADVANCED 画面が表示されます。
- 設定するパッドを選択する。
- カーソル・ボタンもしくはパッドを叩いて選んでください。
- カーソル・ボタンを押して、「Advanced Setting」のパラメータにカーソルを合わせる。
- 「-」「+」ボタンまたはダイヤルで、設定値を変更する。
なお、設定できるパラメータは、パッドによって異なりますが、以下のような設定項目があります。
パラメータ | 設定値 | 説明 |
Position Adjust | 1~10 | 打点位置に対する音色変化を調節します。 値を小さくすると中心寄りに、値を大きくすると外周寄りになります。 |
Position Adjust LR | 1~10 | 左右の打撃位置に対する音色変化を調節します。 値を小さくすると中心寄りに、値を大きくすると外周寄りになります。 |
XStick Detect Sens | OFF 1~5 | クロス・スティック奏法の出やすさを調節します。 「OFF」にすると、クロス・スティック奏法が無効になります。 |
Choke Sens | OFF 1~5 | チョーク奏法の感度を調節します。 「OFF」にすると、チョーク奏法が無効になります。 |
Bell Gain | 0~3.2 | ベルを叩く強さ(ベル・ショット奏法)と音の大きさのバランスを調節します。 値を大きくすると、ベルを弱く叩いても大きな音量で鳴ります。 |
※上記設定の内容は、「F5」ボタン(DEFAULT)を押下することで初期値に戻すことができます。ただし、一部の初期化されないパラメータも存在します。
各パッドのトリガー情報を見る
各パッドにおけるリアルタイムな動作の情報を確認することができます。
手順は以下です。
- 「TRIGGER」ボタンを押下する。
- 3ページ目が表示されていない場合は、PAGE「DOWN」ボタンを数回押してください。
- 「F1」ボタン(TRIG)を押下する。
- TRIGGER MONITOR 画面が表示されます。
- 確認したいパッドを叩く。
手順2におけるTRIGGER MONITOR 画面でのトリガー・インプットが示しているパッドの種類を以下にまとめておきます。
表示 | パッド |
K | KICK |
S | SNARE |
1~4 | TOM1、TOM2、TOM3、TOM4 |
H | HI-HAT |
C | CRASH1、2 |
R | RIDE |
A | AUX1、AUX2、AUX3、AUX4 |
手順3で確認できる情報は、以下になります。
表示 | 説明 |
HI-HAT | ハイハットの開き具合が表示されます。 |
POSITION | パッド・シンバルが打点位置の検出が可能な場合は、打点位置が表示されます。 |
CHOKE | シンバルのチョークを検知している場合は、「CHOKE」アイコンが表示されます。 |
他のパッドの振動による誤発音を防ぐ(クロストーク・キャンセル)
ここで言う「誤発音(クロストーク)」とは、「特定のパッドを叩いた時に、他のパッドも反応する現象」を指しています。
電子ドラムでは、意図的なものを除き、この現象は避けたいものでしょう。生ドラムでも、以下のような場合に起こる可能性がある現象です。
- タムと同じスタンドにシンバルを固定している
- ラックスタンドに全てのデバイスをセットしている。
- タム同士が触れている。
- ハイタム・ミッドタムのスタンドをバスドラムにセットしている。
電子ドラムでは、以下のような場合にクロストーク・キャンセルの設定を見直すと良いと思います。
- セット売りされているキットを通常の構成とは異なる設置の仕方をする場合
- セット売りされているキットではないものを利用する場合(増設を含む)
- 生ドラムにトリガーを付けて、演奏したい場合
なお、クロストーク・キャンセルでも解決しない場合は、物理的な位置関係を見直すことなどを検討してみて下さい。
設定方法は、以下です。実際に叩くパッドを「A」、クロストークを起こしてしまうパッドを「B」として例示します。
- 「TRIGGER」ボタンを押下する。
- 3ページ目が表示されていない場合は、PAGE「DOWN」ボタンを数回押してください。
- 「F2」ボタン(XTALK)を押下する。
- TRIGGER XTALK MONITOR 画面が表示されます。
- パッド:Aを叩く。
- TRIGGER XTALK MONITOR 画面に、クロストークの検出状況が表示されます。
- クロストークしているパッド:Bには、ディスプレイ上で「▲」が表示されます。
- 「F3」ボタン(FOCUS)を押して、パッド:Bにカーソルを合わせる。
- 「F4」ボタン(SET)を押下する。
- クロストークをキャンセルできる最小値が自動で設定されます。
- 設定値は0~80の間で設定されます。
- 自動設定では。40未満で値が設定されます。
- 40以上の値を手動設定する際は、「-」「+」ボタンまたはダイヤルで値を変更してください。
- 複数のパッドがクロストークしてしまっている場合は、手順4、5を繰り返す。
商品情報
TD-50Xの音源を採用されている中、最もコスパが良いと考えている機種です。
まとめ
今回は、「パッドの設定変更」のうち必要に応じて行うようなものについて触れてみました。
設定の微調整をしたり、パッドの増設・変更をした時に知っておきたい内容だと思います。
ROLANDの音源モジュールであれば、操作感は似ていると思うので、参考にしてみて下さい。