【比較レビュー】FANTOM と V-STAGE の違い~買い替え体験から後悔しない選び方を伝授~

本記事では、Rolandの人気シンセ「FANTOM」と「V-STAGE」の違いを、実際に乗り換えた視点で比較レビューします。

これらの機種は、現在のRolandにおけるシンセの2大フラグシップです。

どちらを選ぶか迷っている人もいるかもしれませんが、両者は方向性が全く違います。

ぜひ参考にしてみてください。

なぜ最初に、FANTOMを選んだ理由:「制作」メインの使い方

元々「FA-07」を使用していたのですが、後継にあたる「FANTOM-08」が発売されたのがきっかけです。

当時のキーボードに対する要求は、以下のようなものでした。

要求の内容理由
音源が大量に入っている方が良い 何が必要になるか分からないから、とりあえず全部入りが欲しかった。
もともと所有していた「FA‑07」の後継としてユーザーインターフェース類が似ている 使い慣れたシリーズの進化版という安心感があった。
ZEN‑Core の利用できるものが良い 当時、ZEN-Core音源は、音質・カスタマイズ性に定評があった。
「これ一台あれば何でもできる」という万能性 全部乗せで、一台で鍵盤の役割をカバーしてくれた方が良かった

なお、当時はV-STAGEシリーズのような製品はまだ存在しておらず、「ステージ特化型のRolandのキーボード」という選択肢自体がありませんでした。

そのため、FANTOMシリーズしか選べなかったとも言えるかもしれません。

FANTOMからV-STAGEへ乗り換えた理由:「制作」から「楽器」へ

置き換えを決めたきっかけは、自分の用途が明確になってきたことでした。

FANTOMを使い続ける中で、以下のような理由が重なり、最終的に置き換えることにしました。

置き換え理由詳細
ピアノの音に不満が出てきた
使うほど、「作られた音」に聴こえる感覚が拭えず、気になるようになった
アコースティックピアノやオルガンにより近い弾き心地・音色を求めるようになった
88鍵は、やはり大きい
使用スペースとしても、持ち運びの面でも、88鍵のサイズが負担になってきた
MIDIキーボードとして使う分には、そこまでの鍵盤数は必要ではないとも感じていた
鍵盤のタッチに、満足しなくなった
以下のいずれかのようなリアルな鍵盤タッチの方が良く、違和感を感じ始めた

  • アコピのハンマーを感じられるような自然なタッチ
  • オルガンのような軽快さ
操作が自分の用途に対して複雑すぎる
やりたいことにたどり着くまでの手順が多く、設定の構造が深い
知っていないと使えないような感覚で、操作に慣れが必要。
初見の直感的な操作ができず、ライブでリアルタイムに動かすには向いていない
シーケンサーや制作機能を使っていなかった
曲作りはDAWソフト(ProToolsやCubase)で完結しているため、本体のシーケンサーを使うことがない
DAWを操作する機能は必要ない
DAW向けのMIDIコントロールは別のツールで対応するため、FANTOMのコントロール機能を使う場面がほぼない
MIDIキーボードとして役割は「ノートのMIDI信号が送れること」で十分
FANTOMのDAW CTRLは、ProTools/Cubaseに対応していなかった
ZEN-Coreの資産は引き継げることが分かった
FANTOMで使っていたZEN-Coreの音色はエクスポートして使い回せるため、音源面での心配はそれほどない

ただ誤解してほしくないのは、FANTOMシリーズの音源の幅とシステムとしての完成度は、間違いなく優れているということです。

「なんでも1台で対応したい」「制作からステージまで完結させたい」という用途であれば、今でも最適な選択肢だと思っています。

ただ、使い方が変わり、求めるものが変わってきたゆえの買い替えでした。

V-STAGEの詳細は、別記事を作成予定です。

FANTOM と V-STAGEを比較!どういう違いがあるか押さえよう!

ここでは、置き換えて実感した操作性・機能・仕様の違いについてまとめます。

「FANTOMシリーズ」と「V-STAGEシリーズ」のコンセプト(位置づけ)をまとめると以下のようになります。

  • FANTOM

    • オールインワンワークステーション
    • 制作からステージでの利用まで広くカバー
  • V‑Stage

    • ライブ特化のステージキーボード
    • キーボード奏者のための楽器

「求めるものがどちらに近いのか?」をよく考え、選択するのがキーポイントとなってきます。

以下でそれぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

音色・音源のキャラクター

音色の「種類」や「編集の幅」ではFANTOMが上ですが、ピアノ系の音の「リアルさ」や「気持ち良さ」という体感はV-STAGEの方が私には合っていました。

比較項目FANTOMシリーズV-STAGEシリーズ
音色
  • 制作向けに馴染みやすくするためか、角が丸く加工された印象
  • SuperNATURALやZEN-Core音源による高品位なピアノ
  • ただし「作られた音」に聴こえる感覚が残った
  • 全体的に生々しく、立ち上がりも早い音
  • 特に、鍵盤系の音は、リアルさがある
  • 弾いた感触と音の出方が自然に一致している
音色の幅
  • 非常に広い
  • ピアノ・シンセ・パッド・ストリングスなど全方位をカバー
  • 編集するためのエフェクトが多い
  • ピアノ・エレピ・オルガン中心
  • 編集の幅よりも音そのものの質感と弾き心地の追求に振り切っている
拡張性
  • ZEN-Core対応
  • 外部からインポートも可能で、音色の追加・管理がしやすい
  • FANTOMで使用していたZEN-Core音色はエクスポートして活用可能
  • 無料で以下4つのModel Expansionを利用可能
    • JUNO-106
    • JUPITER-8
    • JX-8P
    • SH-101

鍵盤の違い(タッチ・弾き心地)

私の用途ではピアノ・オルガン系の音を弾く機会が多いため、「アコースティック楽器に近い感触」を重視しています。

その点でV-STAGEの方が体感として好みに合っていました。

比較項目FANTOMシリーズV-STAGEシリーズ
鍵盤の特徴
  • ベロシティ対応シンセ鍵盤(61鍵、76鍵)
  • PHA-4スタンダードを採用(88鍵)
  • ともに、アフタータッチに非対応
  • ウェイテッド・ハンマーアクション・キーボード(88鍵)
  • セミウェイト・ウォーターフォール鍵盤(76鍵)
  • ともに、アフタータッチに対応
弾いた印象
  • しっかりとした重みがある
  • エスケープメント機構も搭載
  • 音と鍵盤の「一致感」が高く、弾いていて自然。
  • オルガン系の弾き心地も求めやすい

操作性の違い(ライブ向けか制作向けか)

使用頻度がそれほど高いわけではないため、FANTOMでは「久しぶりに使うと操作を忘れている」という状況が起きやすかったです。

基本操作が簡単に使えるV-STAGEでは、時間をおいても迷わず使うことができます。

比較項目FANTOMシリーズV-STAGEシリーズ
操作の深さ
  • 設定が多層になっており、目的の操作にたどり着くまでの手順が多い
  • 慣れが必要
  • ステージでの使用を前提に操作方法が整理されている
  • 直感的に設定変更が可能
音色調整やエフェクト適用
  • 設定の自由度は高いが、弾きながらのリアルタイムの操作には向いていない
  • 以下でカテゴリ分けされた鍵盤上のノブを使って、簡単に調整が可能。
    • 4つのサウンド・エンジン
    • エフェクト
    • マスター
  • コントロールノブは、各カテゴリで区分けされ、共通した操作性がある
セットアップ
  • 多機能なぶん、最初の設定に時間がかかる
  • 使いこなすには学習コストがある
  • シンプルで素早くセットアップできる
  • 使い始めるまでのハードルが低い

MIDIキーボードとしての機能

私の用途としては「ノートのMIDI信号が送れれば十分」という割り切りがあり、DAW操作はSSL UF8側で完結しています。

そのため、MIDIキーボードとしての基本機能さえあれば、どちらも問題なく使えます。

比較項目FANTOMシリーズV-STAGEシリーズ
MIDI出力
  • USB、DIN MIDIに対応
  • MIDIキーボードとして十分に機能する
  • USB、DIN MIDIに対応
  • MIDIキーボードとして最低限の機能は揃っている
DAWコントロール
  • 「Logic Pro X」「MainStage」「Ableton Live」をコントロールするプリセットが搭載
  • 「ProTools」「Cubase」との連携はデフォルトでサポートしていない
  • シームレスなDAWコントロール機能は「MainStage」のみ
パッド
  • パッドを搭載
  • 各パッドに交換音を録音・再生が可能
  • パッド入力の打ち込みに利用可能
  • パッドは非搭載

サイズ・可搬性(持ち運びはどうなのか?)

MIDIキーボードとしての用途も含め、「フルサイズ88鍵でなくても良い」という結論に至ったことも、乗り換えの大きなきっかけになっています。

比較項目FANTOMシリーズV-STAGEシリーズ
鍵盤数
  • 61鍵
  • 76鍵
  • 88鍵
  • 76鍵
  • 88鍵
サイズ感・重量
  • コンパクト設計で、88鍵の横幅が140cm未満
  • 重量は15kg未満(88鍵)で、同じ鍵盤数のキーボードの中では非常に軽い
  • コンパクト設計で、88鍵の横幅が135cm未満
  • 重量は15kg超(76鍵)/20kg超(88鍵)で比較的重い
持ち運び
  • 同系統のキーボードの中では、圧倒的に運搬が楽
  • 重量があるため、車輪付きの専用ケースが販売されている
V-STAGEの方が重い点について
上記の重量において、V-STAGEの方が格段に重くなりますが、これは「サウンド・エンジンの数」や「鍵盤の機構」に起因するところが多いです。
「サウンドエンジン」は4つそれぞれに独立したコントロールノブが搭載されており、比例して回路やパーツの数が増えてしまいます。
また、「鍵盤」についても、より生のピアノに近づけるため、重さも増してしまいます。
「重量」と「弾き心地のリアルさ」のどっちを取るか?がポイントになるでしょう。

商品情報

「4つの独立したサウンドエンジン」とオルガンに近いタッチの「新開発のセミウェイト・ウォーターフォール鍵盤」を搭載した76鍵のパフォーマンスキーボード
「4つの独立したサウンドエンジン」とピアノに近いタッチの「ウェイテッド・ハンマーアクション鍵盤(エスケープメント対応のアイボリーフィール鍵盤)」を搭載した88鍵のパフォーマンスキーボード。
制作から演奏まで幅広くカバーするオールインワンワークステーション

「FANTOMシリーズ」と「V-STAGEシリーズ」を選ぶ分かれ目はコレ

今回は、FANTOMシリーズを手放しV-STAGEシリーズに置き換えた経緯と、実際に感じた違いについてまとめました。

双方を使って感じるのは、互いに両極にあるということです。

使い方に対して、おすすめとなるシリーズは、以下です。

  • 製作向け(制作からステージまで1台で):FANTOMシリーズ
  • ライブ向け(パフォーマンスを重視):V-STAGEシリーズ
  • 音源重視(音源を編集を含めてフル活用):FANTOMシリーズ
  • 鍵盤系音色(ピアノ・オルガン系の音/弾き心地):V-STAGEシリーズ

迷っている人は、「自分が鍵盤の前で最も長く行っている作業」を基準に考えてみると良いでしょう。

実機を触れる環境があれば、ぜひ鍵盤タッチも比較してみてください。

これから新規導入を検討している人や、置き換えを考えている人の参考になれば幸いです。

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