3DCGソフトの中でもフリーソフトで高機能なBlenderには、レンダリング時の構図を設定する「カメラ」があります。
「カメラ」では、「ピント」「アングル」などの通常のカメラと同じような設定ができます。
今回は、そんな「カメラ」の使い方について記載していきます。なお、本内容は、V4.2.0時点のリリース物件に沿った内容となっています。
カメラ使用時の操作
ここでは、カメラを扱う上での基本となる操作を記載します。ちなみに、3Dビューポートで表示される「カメラ」は、以下の赤丸のものです。
カメラの追加
カメラを追加する操作は、通常のオブジェクトと同じです。3Dビューポートにある「追加」から「カメラ」を選択することで利用できます。もちろん、ショートカットキー「Shift + A」による追加でも使用することが可能です。
アクティブカメラの設定
カメラは、3Dビューポートに複数台設定することが可能です。しかし、実際にレンダリングする際に使われるカメラは、そのうち1台のみです。そこで、どのカメラでレンダリングをするか?を決める必要があります。それが、「アクティブカメラの設定」です。
アクティブカメラに設定したいカメラを選択後、メニューの[ビュー] > [カメラ設定] もしくは 右クリックによる[コンテクストメニュー] で設定できます。
なお、アクティブカメラに設定されているカメラは、四角錐の底面に付いている三角印が色塗りで表示されます。
カメラビューへの切り替え
カメラビュー(カメラで投影(撮影)されているビュー)は、3Dビューポートの右側にある「ビデオカメラ」のマークを押下することで確認することができます。四角で囲まれた明るい範囲が、実際に撮影される範囲になります。
元々のビューに戻すには、再度「ビデオカメラ」のマークを押下してください。もしくは、以下のように[ビュー] > [視点] > [カメラ] を押下しても実施が可能です。
また、3Dビューポートにおいて現在表示されているビューの内容をカメラの映像としたい場合は、[ビュー] > [視点を揃える] > [現在の視点にカメラを合わせる] を押下すると良いでしょう。
カメラのギズモ
カメラのギズモ(移動/回転/拡大縮小)については、他のオブジェクト同様に扱うことが可能です。移動は「G」、回転は「R」、拡大縮小は「S」で対応ができます。また、下図でギズモが表示されているカメラの底面から離れている頂点が、これらの操作の支点に当たる部分になります。
上記の他、3Dビューポートの ヘッダーにある [オブジェクト] > [トランスフォーム] から選択したり、左側に表示される「ツールバー」から実施することも可能です。
カメラのプロパティ
ここでは、カメラのプロパティの設定内容について説明していきます。
設定する場所は、3Dビューポートでカメラを選択した時に表示される「オブジェクトデータプロパティ」で行います。
レンズ
レンズでは、3Dのオブジェクトが2Dの画像で表現される方法を設定します。以下の設定値が存在します。
設定内容 | 説明 |
タイプ | レンズのタイプを以下の3種から選択します。 【透視投影】 【平行投影】 【パノラマ状】 |
焦点距離 | 被写体とカメラレンズの距離を設定します。 最低 1mm から 設定できます。 値が小さいほど、広角になります。 タイプが「透視投影」もしくは「パノラマ状」、かつ レンズ単位が「ミリメーター」の時に表示される設定値です。 |
視野角 | カメラレンズの視野角を設定します。 0.367度~172.847度の範囲で選択できます。 値が大きいほど、広角になります。 タイプが「透視投影」もしくは「パノラマ状」、かつ レンズ単位が「視野角」の時に表示される設定値です。 |
レンズ単位 | 「ミリメーター」もしくは「視野角」で選択することができます。 タイプが「透視投影」もしくは「パノラマ状」の時に表示される設定値です。 |
平行投影のスケール | ズームのようなもので、平行投影のカメラのスケールです。 タイプが「平行投影」の時のみ表示される設定値です。 |
シフト X | カメラが向いている方向をX軸方向にずらします。 カメラの置かれている位置は変わりません。 |
シフト Y | カメラが向いている方向をY軸方向にずらします。 カメラの置かれている位置は変わりません。 |
範囲の開始 | レンダリングする際の開始(手前)の位置です。 |
終了 | レンダリングする際の終了(奥)の位置です。 |
参考図を以下に記載します。
被写界深度
被写界深度には、以下の設定が存在します。
設定内容 | 説明 |
被写界深度 | ピントが合う奥行きの範囲です。 被写体以外をぼかすことで、実際の写真のように奥行きを表現したり、被写体を強調させることができます。 チェックボックスをOnにすることで、設定を有効にすることができます。 |
焦点のオブジェクト | 常に特定のオブジェクトに焦点を合わせたい場合は、こちらで設定します。 人物認識のオートフォーカスのようなイメージです。 設定されている場合は、「撮影距離」よりも優先されます。 |
撮影距離 | 常に一定の距離に焦点を合わせたい場合は、こちらで設定します。 カメラのマニュアルフォーカスのようなイメージです。 「焦点のオブジェクト」が設定されていない場合に機能します。 |
絞り > F値 | ボケ具合を調整する値です。 カメラの構造的には、カメラ内部に取り込む光の量の制限する値になります。 この値を小さくすると、取り込む量にが大きくなり、ピントが合う範囲が広くなります。 この値を大きくすると、取り込む量にが小さくなり、ピントが合う範囲が狭くなります。 |
絞り > 絞り羽根 | 光を通す穴の形です。 穴なので、多角形になるように3以上(三角形以上)の値を設定することになります。 主に、星などの光源や光の見え方(光芒)に影響を及ぼします。 |
絞り > 回転 | 絞り羽根を回転させる設定です。 範囲は、-180度~180度です。 |
絞り > 比率 | ボケ具合の歪み方を調整します。 1.0では歪みなしとなり、1.0未満では水平方向の歪みが発生、1.0より大きいと垂直方向の歪みが発生します。 |
カメラ
カメラには、以下の設定が存在します。プリセットは、リアルなカメラに合わせています。
設定内容 | 説明 |
センサーフィット | どの視野角に合わせて寸法を設定するかを決定します。 設定値は、以下の3種から選択します。 ・自動 ・水平 ・垂直 |
サイズ | センサーフィットが「自動」の時のみ表示される設定値です。 センサー領域の水平方向のサイズになります。 焦点距離を変更するのではなく、視野を制御するために使用します。 モーショントラッキングなどを行う時に便利です。 |
幅 | センサーフィットが「水平」の時に設定できる値です。 センサー領域の水平方向のサイズです。 焦点距離を変更するのではなく、視野を制御するために使用します。 モーショントラッキングなどを行う時に便利です。 |
高さ | センサーフィットが「垂直」の時に設定できる値です。 センサー領域の垂直方向のサイズです。 焦点距離を変更するのではなく、視野を制御するために使用します。 モーショントラッキングなどを行う時に便利です。 |
セーフエリア
「古いテレビが フルHDのような映像(画面)を受信する古いテレビ」などの状況では、本来の映像(画像)から一部が切り落とされます。そのため「ここだけは確実に表示されるようにしてほしい」という個所が出てくるかと思います。セーフエリアでは、この箇所を設定します。セーフエリアには、以下の設定が存在します。
設定内容 | 説明 |
セーフエリア | 重要なものを引き続き表示させるようにする「『安全』とみなせる領域」です。 チェックボックスをOnにすることで、設定を有効にすることができます。 有効にすると、カメラビューで点線のガイドが表示されるようになります。 |
タイトルセーフのマージン X | テキストとグラフィックのセーフエリアの水平方向のサイズです。 |
タイトルセーフのマージン Y | テキストとグラフィックのセーフエリアの水直方向のサイズです。 |
アクションセーフのマージン X | 全般的なセーフエリアの水平方向のサイズです。 |
アクションセーフのマージン Y | 全般的なセーフエリアの水直方向のサイズです。 |
センターカットセーフエリア | チェックボックスをOnにすることで、設定を有効にすることができます。 有効にすると、異なるアスペクト比のコンテンツに対するセーフエリアを表示します。 表示されるのは、セーフエリアの内側になります。 |
センターカットセーフエリア > センタータイトルセーフのマージン X | 異なるアスペクト比のテキストとグラフィックのセーフエリアの水平方向のサイズです。 |
センターカットセーフエリア > センタータイトルセーフのマージン Y | 異なるアスペクト比のテキストとグラフィックのセーフエリアの水直方向のサイズです。 |
センターカットセーフエリア > センターアクションセーフのマージン X | 異なるアスペクト比の全般的なセーフエリアの水平方向のサイズです。 |
センターカットセーフエリア > センターアクションセーフのマージン Y | 異なるアスペクト比の全般的なセーフエリアの水直方向のサイズです。 |
下絵
下絵として、背景に画像・動画を埋め込むことができます。下絵では、以下の設定が存在します。
設定内容 | 説明 |
下絵 | 別途作成した「画像」「動画」などを埋め込む設定です。 チェックボックスをOnにすることで、設定を有効にすることができます。 |
画像を追加 | 埋め込みたい「画像」「動画」などを選択 および 詳細な設定をすることができます。 |
以下は、画像もしくは動画を追加した際に表示される設定です。
設定内容 | 説明 |
背景ソース | 埋め込むオブジェクトが「画像」もしくは「動画」かを選択します。 |
ソース | 画像の読み込み元を以下から設定します。 ・単一画像 ・連番画像 ・動画 ・生成 ・UDIMタイル 画像を取り込んだ際にのみ表示される設定です。 |
アクティブクリップ | アクティブなシーンカメラ用に、動画クリップを使用します。 |
色空間 | 画像もしくは動画ファイルが使用する色空間を設定します。 「リニア」と「sRGB」から選択できます。 |
歪みなしでレンダリング | 使用可能な場合に限り、プレビューを歪みなしのプロキシで背景画像を表示します。 動画を取り込んだ際にのみ表示される設定です。 |
プロキシレンダーサイズ | プレビューを「フル(非プロキシ)」もしくは「プロキシのサイズ」での解像度で背景画像を表示します。 動画を取り込んだ際にのみ表示される設定です。 設定値は以下です。 ・25% ・50% ・75% ・100% ・なし フルレンダー |
不透明度 | 背景画像の不透明度を設定します。 設定範囲は、0.000~1.000です。 |
深度 | 画像の表示位置を以下から選択します。 ・後(すべてのオブジェクトの後ろに表示) ・前(すべてのオブジェクトの前に表示) |
フレーム方法 | 画像をカメラビューに表示する方法を以下から設定します。 【ストレッチ】 【フィット】 【トリム】 |
オフセット X | 背景画像の水平方向における配置位置です。 |
オフセット Y | 背景画像の水直方向における配置位置です。 |
回転 | 画像の中心を視点とした下絵の回転角度です。 |
スケール | 画像の中心を視点とした下絵の拡大縮小です。 |
反転 X | 水平方向に反転するように、画像を入れ替えます。 |
反転 Y | 水直方向に反転するように、画像を入れ替えます。 |
ビューポート表示
ビューポート表示には、以下の設定が存在します。
設定内容 | 説明 |
サイズ | 3Dビューポート上でのカメラの見かけのサイズです。 この設定は、カメラのレンダリング出力には影響しません。 |
表示 > リミット | 3Dビューポート内に「クリッピングの開始値と終了値を示す線」と「焦点の位置」が表示されるようになります。 |
表示 > ミスト | 3Dビューポート内に ミストの効果を及ぼす範囲を2点から成る線分で表示されます。 ミストとは、カメラから遠い位置を霧がかったのように表現する方法です。 |
表示 > センサー | カメラビューに点線のセンサーのサイズ(フィルムゲート)を表示します。 |
表示 > 名前 | 現在使用しているカメラ(アクティブカメラ)の名前を表示します。 |
外枠 | カメラビューの画像領域外を暗く表示します。 |
コンポジションガイド > 三分割 | フレームを垂直方向と水平方向の各々を3分割する補助線を表示します。 9個のマスができるイメージです。 |
コンポジションガイド > 中心 > 中心 | フレームを垂直方向と水平方向の各々を2分割する補助線を表示します。 4個のマスができるイメージです。 |
コンポジションガイド > 中心 > 斜め | 対角線の補助線(2本)を表示します。 |
コンポジションガイド > 黄金 > 比率 | 幅と高さを黄金比(フレームの端から約61.8%の長さ)に分割します。 |
コンポジションガイド > 黄金 > 三角形 A | 以下の3つの補助線を表示します。 ・左下と右上の角を通る対角線 ・左上の角を通る上記対角線の垂線 ・右下の角を通る上記対角線の垂線 |
コンポジションガイド > 黄金 > 三角形 B | 以下の3つの補助線を表示します。 ・左上と右下の角を通る対角線 ・左下の角を通る上記対角線の垂線 ・右上の角を通る上記対角線の垂線 |
コンポジションガイド > 調和 > 三角形 A | 以下の3つの補助線を表示します。 ・左下と右上の角を通る対角線 ・左上の角を通り、上記対角線で 61.8%で分断される線 ・右下の角を通り、上記対角線で 61.8%で分断される線 |
コンポジションガイド > 調和 > 三角形 B | 以下の3つの補助線を表示します。 ・左上と右下の角を通る対角線 ・左下の角を通り、上記対角線で 61.8%で分断される線 ・右上の角を通り、上記対角線で 61.8%で分断される線 |
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まとめ
今回は、レンダリング時の構図を決定づける「カメラ」について記載しました。
使い方次第で、任意の構図での画像・映像作成に非常に便利なツールになってくれます。上記の内容を参考に、色々試してみて下さい。