音楽をするための基礎知識~落ち着くポイント:終止編~

今回は、コード進行の中で落ち着くポイントとなる「終止」について説明します。

普段曲を聴いていると、サビの前後などで落ち着くポイントがあることに気づきませんか?それが「終止」です。単に終止と言っても様々な種類があります。使い方によって、曲に抑揚や雰囲気を変えることもできるものです。

この記事の内容が、皆さまのお役に立てたら嬉しいです。

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終止とは

「終止」とは、曲の中で「落ち着き」や「区切り」を聞き手に感じさせるコード進行のことを指す言葉です。ここで言うコードは、和音として考える方が理解しやすいでしょう。

「終止」の方法はいくつかの代表的なものがあります。しかし、必ずこのどれかに当てはまるというものではありません。別になくても問題はありませんが、メリハリや抑揚がなくなることになるでしょう。文章で句読点がなく、棒読みしているような状態に近いと思います。お経を聞いているような感じになるかもしれません。

終止の種類

ここからは、「終止」の種類について説明します。毎回ワンパターンの終止の方法を用いていると、聴き手も飽きますし、つまらないものになってしまいます。そこで様々な終止の方法を織り交ぜることも重要になってきます。

また、「終止」は「ケーデンス」と呼ばれることから、以下の各終止名は「○○終止」を「○○ケーデンス」と呼んだりすることもあります。

正格終止

最も強い解決感を得られます。おそらく、一番使われているのではないでしょうか。他にも「ドミナント終止」「全終止」と呼ばれることもあります。または、「クローズドシーケンス」「スタンダードシーケンス」です。

実際の進行では「V」⇒「I」のように、スケールにおけるドミナントファンクションを持つコードから、トニックファンクションを持つコードに進行する終止方法です。Keyが「C」だとすると、G ⇒ C、G7 ⇒ Cが一例です。

なお、この「正格終止」はさらに2種類に分けられます。

完全正格終止

終止先のコードを構成する一番高い音がトニックであるものです。「完全終止」と呼ばれることが多いかもしれません。「パーフェクトオーセンティックケーデンス」と呼ばれ、「P.A.C.」と記載されることもあります。

聴き手からすると、解決した印象が非常に強く感じる傾向があります。そのため、曲の最後なんかでは、特に使われる可能性が高いでしょう。

不完全正格終止

終止先のコードを構成する一番高い音が主音でない音(主に、メディアント)であるものです。「不完全終止」と呼ばれることが多いかもしれません。「インパーフェクトオーセンティックケーデンス」と呼ばれ、「I.A.C.」と記載されることもあります。

聴き手からすると、解決した印象が非常に感じやすい進行でありながら、強い解決感は感じにくくなります。そのため、曲の途中で使われることが多いでしょう。

正格終止のバリエーション

基本形のコード進行は「ドミナントファンクション」⇒「トニックファンクション」ですが、バリエーションとしてよく使われる形も存在します。

  • 「サブドミナント(Ⅳ)」⇒「ドミナント(V)」⇒「トニック(I)」
  • 「Ⅱ-7」⇒「V7」⇒「I」

前者は、スムーズな進行に感じられるため、ポップスやクラシックの曲で多用されています。「トラディショナルフルケーデンス」と呼ばれることもあります。

後者は「ツーファイブ」とも言い、ジャズではスタンダードなコード進行になってきます。「コンテンポラリーフルケーデンス」もしくは「ジャズフルケーデンス」と呼ばれることもあります。

ちなみに、コード分析時の「ツーファイブ」の表記は、「Ⅱ-7」⇒「V7」にブラケットを使用して以下のように記載します。「Ⅳ」⇒「V」⇒「I」の場合は、ブラケットは記載せずに矢印のみを記載します。単に正格終止するだけであれば、「V7」以降の記載のみになります。

変格終止

正格終止よりも少し弱まった解決感を得られます。他にも「サブドミナント終止」「変終止」「アーメン終止」と呼ばれることもあります。アーメン終止と呼ばれるのは、讃美歌の「アーメン」で使用されている終止の方法だからです。

実際の進行では「Ⅳ」⇒「I」のように、スケールにおけるサブドミナントファンクションを持つコードから、トニックファンクションを持つコードに進行する終止方法です。Keyが「C」だとすると、F ⇒ Cが一例です。

この終止では「ドミナントに相当する音」「リーディングトーン(7度の音)」を含まないため、ファンクションを持つ完全にストップするような印象は与えないと思います。それゆえ正格終止よりも弱い解決感を表現したい場合の「正格終止同様の曲の最後」や「完全終止の後」に使われることが多いです。

変格終止のバリエーション

基本形のコード進行は「サブドミナントファンクション」⇒「トニックファンクション」ですが、バリエーションとしてよく使われる形も存在します。

  • 「サブドミナント(Ⅳ)」⇒「二度の音をベースに転回したコード(Ⅱ7 や Ⅶ7)」⇒「トニック(I)」
  • 「サブドミナント(Ⅳ)」⇒「サブドミナントマイナー(Ⅳm)」⇒「トニック(I)」

前者は「Ⅱ7」「Ⅶ7」が「Ⅳ」と同じ構成音を含むため、Ⅳの代わりに使用したコード進行です。「同じ構成音+α」かつ「ドミナント(五度の音)を含まない」という特徴があるため、正格終止ほどの強い解決は得られません。そのため、変換終止と似た効果を得られます。

後者も同様です。メジャーかマイナーかの差はありますが、サブドミナントファンクションを持つコードから、トニックファンクションを持つコードに進行するという流れは変わりません。また、メジャーよりもマイナーの方がより暗い印象を抱くために同様の終止の効果を期待でき、バリエーションの1つになりえます。

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半終止

解決感がなく、終わった感じが全く得られないまま次のフレーズにつながります。

実際の進行では曲の最後がドミナントファンクションを持つコードで終わる終止方法です。Keyが「C」だとすると、「Ⅴ」「Ⅴ7」が一例です。直前がどんなコードだったとしても、ドミナントファンクションを持つコードで終われば、半終止となります。

解決感が全く得られないということは、曲の流れを無理に止めないということです。そのため、ジャンルを問わず、曲の途中で使われます。

偽終止

聴き手の期待を裏切るような印象を受けます。それゆえ「偽りの終止」と言えます。

実際の進行ではドミナントファンクションを持つコードからトニック(I)へ進行しない終止方法です。通常は、正格終止のようにドミナントファンクションを持つコードからは、「Ⅰ」に進行することが多いです。ですが、偽終止では「Ⅰ」とほぼ同じ構成音である代理コード「Ⅵ-」などに進行します。「不安定な音」から「安定の音」に進行する中で、「安定の音」をトニック「Ⅰ」に似た音で対応するのが、偽終止と考えても良いかもしれません。

コード分析時の表記は、「(V)」のようにドミナントファンクションを持つコードをカッコで括ります。

番外編

男性終止

上記4つの終止の方法の中で、終止のコードが1拍目で終わる(強拍)場合の終止を指します。

女性終止

上記4つの終止の方法の中で、終止のコードが1拍目で終わらない(弱拍)場合の終止を指します。

まとめ

今回は「終止」について記載しました。曲の要素を作る要素であったり、興味を持たれた方は、ぜひ「終止」に着目して曲を聞いてみて下さい。自分の好きな曲の傾向、嫌いな曲の傾向なんてものにも気づくかもしれませんね。皆さんの参考にしてもらえたら嬉しいです。

参考

この記事で使われている用語について、分からない方は以下の文書もご覧ください。

↓↓トニックなどの度数について詳しく知りたい方はこちら↓↓
音楽をするための基礎知識~各度数の特徴編~

↓↓楽曲分析のローマ数字の意味が分からない方はこちら↓↓
音楽をするための基礎知識~楽曲分析編~

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