動画編集ソフトのDaVinci Resolveでは、ページ毎に役割を設けて、やれることを分けています。
今回は、その中でも編集に関わるエディットページの「合成」の使い方をチュートリアルとしてまとめていこうと思います。
なお、ここで紹介する内容は、DaVinci Resolve Studio 18 に基づいた内容になっています。
合成について
2つのトラックによって同じ時間に重ねられた(スーパーインポーズされた)クリップを組み合わせるエフェクトのことを「合成」と言います。
なお、スーパーインポーズされたクリップが3つ以上ある場合は、以下のルールに則った仕様で働きます。
- 合成モードの設定を行ったクリップよりも、下のトラックにあるクリップを合成されるクリップとする。
- 下のトラックにあるクリップのうち、無効なクリップは無視される。
- 下のトラックに有効なトラックが複数存在する場合は、最も近いトラックが合成されるクリップとなる。
また、クリップを組み合わせる際は、インスペクタで「合成モード」と「不透明度」の設定を駆使しつつ調整することになります。
合成モードを利用する際に、基本となる手順を以下にまとめます。
やりたいこと | 手順 |
合成モードの有効化(設定/変更) |
|
合成モードの無効化 |
|
合成モードでの計算について
合成モードの種類には、加算、減算、乗算、除算などの計算を伴うものがあります。
これらのモードで計算する対象になるのは、一般的に「ピクセル単位のRGB(赤、緑、青)の値」です。
RGBのそれぞれの値は、「最小値:0」に近づくほど暗く、「最大値:255」に近づくほど明るくなります。
また、計算する上では「0」は「0」、「255」を「1」とした「0」~「1」の値(つまり各RGBの値を255で割った値)を用います。
上記を踏まえ、基本となる式は以下のようになります。
- 「結果色(*1)」 = 「基本色(*2)」「演算子(*3)」「合成色(*4)」/ 255
*1)結果色:表示される色を指します。
*2)基本色:合成される色(下段のクリップの色)を指します。
*3)演算子:合成モードにより、「+」「-」「×」「÷」が当てはまります。
*4)合成色:合成する色(上段のクリップの色)を指します。
合成モードの種類
以下に、インスペクタの「合成モード」で設定できる内容をまとめます。
なお、Photoshopのような画像編集とほぼ同じなので、単色ジェネレーターの利用した表現にも活用できると思います。
通常
「合成」が働きません。
タイムラインエディター上で、一番上のトラックのクリップが採用されます。
加算
元の色よりも、全体的に明るくなりますが、色の濃さ(コントラスト)は大きく変わりません。
発光しているような変化が欲しい場合に有効です。
なお、計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 基本色 + 合成色
カラー
基本色の輝度(人が感じる色の明るさ)を維持したまま、合成色の色相と彩度を適用する合成モードです。
これにより、「色相(後述)」とは異なり、基本色が無彩色であっても、結果色に色が付きます。
焼き込み(カラー)
元の色よりも、全体的に暗く、濃く(コントラストが高く)なります。
そのため、合成処理により、明暗差が出る反面、暗い部分の色が黒くなりすぎることがあります。
なお、計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 255 – {(255 – 基本色) / 合成色 }
覆い焼き(カラー)
元の色よりも、全体的に明るく、濃く(コントラストが高く)なります。
そのため、「光らせないように、明るさを上げたい」という場合に使えます。
ただし、合成処理により、明るい部分の色が白くなりすぎることがあります。
なお、計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 基本色 * 255 / (255 – 合成色)
比較(暗)
合成するクリップを比較した時のRGB値のそれぞれに対し、暗い方(値が小さい方)を表示します。
そのため、色としてみた時の比較ではないため、合成対象のクリップに存在しないカラーで表示される場合があります。
例えば、グレー系と青系の色で合成した場合、緑系の色になってしまいます。
明るい色の箇所を変えたい場合に有効です。
全体的に落ち着いて統一感の取れた印象を与えます。
カラー比較(暗)
それぞれのクリップのRGB値を合計し、合計値が低い(暗い)方を表示します。
そのため、基本色と合成色となるカラーのみ表示され、存在しないカラーで表示されることはありません。
計算式は以下のような式になります。
- 基本色のRGBの合計 < 合成色のRGBの合計
- 結果色 = 基本色のR値 + 基本色のG値 + 基本色のB値
- 基本色のRGBの合計 ≧ 合成色のRGBの合計
- 結果色 = 合成色のR値 + 合成色のG値 + 合成色のB値
差の絶対値
上段のクリップと下段のクリップのRGB値のそれぞれに対する差の絶対値を表示します。
そのため、色が近ければ近いほど、得られる色は黒に近づきます。
全く同じ色だと真っ黒になるので、位置ずれなどの一時的な「差分チェック」に役立ちます。
なお、計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = | 基本色 – 合成色 |
除算
明るい色に変化するため、ハイライトを施すような加工にも便利です。
また、色が近いほど明るくなるので、基本色と合成色が全く同じ色の場合は、打ち消し合って真っ白になります。
計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 255 * 基本色 / 合成色
除外
得られる結果は「差の絶対値」と似ていますが、コントラストがより低く、柔らかい印象を与えます。
計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 基本色 + 合成色 – {(2 * 基本色 * 合成色) / 255}
ハードミックス
基本色と合成色を足した結果に基づいて、8種類の色を用いた表現を行います。
そのため、数ある合成モードの中でも一番極端な結果を得られます。
8種類の色は、「赤」「緑」「青」「黄」「マゼンダ」「シアン」「白」「黒」になります。
なお、計算式は以下のような式になります。
- (基本色 + 合成色) < 255 の場合
- 結果色 = 0
- (基本色 + 合成色) ≧ 255 の場合
- 結果色 = 255
ハードライト
「乗算」と「スクリーン」を組み合わせ、双方の特徴を活かした処理が行われます。
しかし、基準とする色は、合成色になります。
そのため、合成元が暗いところにも、色が乗りやすくなる利点があります。
計算式はオーバーレイと逆になり、以下のようになります。
- 合成色 < 128 の場合
- 結果色 = 2 * {基本色 + 合成色 – (基本色 * 合成色 / 255) } – 255
- 合成色 ≧ 128 の場合
- 結果色 = 基本色 * 合成色 * 2 / 255
色相
基本色の輝度(人が感じる色の明るさ)を維持したまま、合成色の色相を適用する合成モードです。
また、無彩色がある場合は、以下のように処理されます。
- 合成色が無彩色の場合
- 結果色は無彩色になります。
- 基本色が無彩色の場合
- 色相が適用されません。
比較(明)
合成するクリップを比較した時のRGB値のそれぞれに対し、明るい方(値が大きい方)を表示します。
そのため、色としてみた時の比較ではないため、合成対象のクリップに存在しないカラーで表示される場合があります。
簡易的なディフュージョン(光の拡散)のような効果を得たい場合などに有効です。
カラー比較(明)
それぞれのクリップのRGB値を合計し、合計値が高い(明るい)方を表示します。
そのため、基本色と合成色となるカラーのみ表示され、存在しないカラーで表示されることはありません。
計算式は以下のような式になります。
- 基本色のRGBの合計 < 合成色のRGBの合計
- 結果色 = 合成色のR値 + 合成色のG値 + 合成色のB値
- 基本色のRGBの合計 ≧ 合成色のRGBの合計
- 結果色 = 基本色のR値 + 基本色のG値 + 基本色のB値
焼き込み(リニア)
「焼き込み(カラー)」と同様に元の色よりも全体的に暗くなりますが、明暗差は大きく変わりません。
元の色を暗くし、カラーフィルムを被せたような印象を与えます。
そのため、夜間を表現など、単色ジェネレータ―なども用いて、全体的な色味の統一なんかにも利用することができます。
なお、計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 基本色 + 合成色 – 255
覆い焼き(リニア)
この合成モードは「加算」と同じです。
リニアライト
弱めの「焼き込み(リニア)」と「覆い焼き(リニア)」を組み合わせ、双方の特徴を活かした処理が行われます。
ハードライトよりも彩度・コントラストが高い結果色を得られます。
なお、計算式は以下のようになります。
- 結果色 = 基本色 + 2 * 合成色 – 255
輝度
基本色の色相・彩度を維持したまま、合成色の輝度(人が感じる色の明るさ)を適用する合成モードです。
「カラー(前述)」とは、逆の処理を行うことになるので、基本色と合成色を入れ替えて「カラー」を適用すると、本モードと同じ結果色が得られます。
乗算
合成する2色のRGB値をそれぞれ掛け合わした色を表示します。
そのため、元の色よりも全体的に暗い印象を与えます。
また、得られる結果は「黒い(暗い)部分は維持し、白い(明るい)部分は透過する」と言い換えることもできます。
そのため、「白い部分を別の画像・映像に置き換える」「明るい場所に、影を落とす」など様々な利用方法が考えられます。
なお、計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 基本色 * 合成色 / 255
オーバーレイ
「乗算」と「スクリーン」を組み合わせ、双方の特徴を活かした処理が行われます。
基本色を基準として、基本色の明るいところはより明るく、暗いところはより暗く表現されます。
彩度(S)や明度(VもしくはB)を変化させたい時に向いていて、色相(H)は大きく変わりません。
なお、計算式は以下のような式になっており、「255」の中央値「128」未満と以上で処理が変わります。
- 基本色 < 128 の場合
- 結果色 = 2 * 基本色 * 合成色 / 255
- 基本色 ≧ 128 の場合
- 結果色 = 2 * {基本色 + 合成色 – (基本色 * 合成色 / 255) } – 255
ピンライト
「比較(明)」と「比較(暗)」を組み合わせ、双方の特徴を活かした処理が行われます。
合成色を基準とした処理で、合成色の明るいところは「比較(明)」、暗いところは「比較(暗)」の効果になります。
なお、計算式は以下のように4パターンに分かれています。
- 合成色 < 128 の場合
- 「基本色 < 合成色」の時
- 結果色 = 基本色
- 「基本色 > 合成色」の時
- 結果色 = 2 * 合成色
- 合成色 ≧ 128 の場合
- 「基本色 < 合成色」の時
- 結果色 = 2 * 合成色 -255
- 「基本色 > 合成色」の時
- 結果色 = 基本色
彩度
基本色の輝度(人が感じる色の明るさ)を維持したまま、合成色の彩度を適用する合成モードです。
なお、基本色が無彩色の場合は、彩度が適用されません。
スクリーン
乗算の結果を反転した色を表示します。
そのため、元の色よりも全体的に明るい印象を与えます。
ふんわりと柔らかい光やモヤの表現、明るい部分を際立たせたい場合に有効です。
なお、計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 基本色 + 合成色 – (基本色 * 合成色 / 255)
ソフトライト
基本的には、オーバーレイと同じような効果が得られます。
オーバーレイとの違いは、コントラストが弱めになることです。
そのため、柔らかさと明るさを同時に得ることができます。
計算式は、明確に記載されている参考文献がなく、分かりませんでした。
減算
合成する2色のRGB値をそれぞれ引いた色を表示します。
また、基本色と合成色を同じものとした場合、減算した結果のHSV(色相、明度、彩度)を反転させると、焼き込み(リニア)と同じ結果を得ることができます。
基本色と合成色を逆にすると、得られる結果は異なります。
なお、計算式は以下のような式になります。
- 結果色 = 基本色 – 合成色
ビビッドライト
「覆い焼き(カラー)」と「焼き込み(カラー)」を組み合わせ、双方の特徴を活かした処理が行われます。
「オーバーレイ」の強化版のようなもので、コントラストと彩度が強めに表現されます。
なお、計算式は以下のような式になっており、「255」の中央値「128」未満と以上で処理が変わります。
- 合成色 < 128 の場合
- 結果色 = {基本色 – (255 – 2 * 合成色)} / (2 * 合成色)
- 合成色 ≧ 128 の場合
- 結果色 = 基本色 / {2 * (255 – 合成色)}
不明
読み込んだXML/AAFファイルの合成モードがDaVinci Resolveでサポートされていない場合は、合成モードのポップアップメニューに「不明」と表示されます。
「不明」の場合は、「通常」と同様に合成が適用されません。
不透明度
クリップを選択して開くインスペクタには「不透明度」パラメーターがあり、透明度の調整ができです。
「0:完全に透明」「100:完全に不透明」となり、透過するものは、下のトラックになります。
混ざり方は、合成モードによって決まり、裏にクリップが存在しない場合は、「単色:黒」になります。
商品情報
公式HPでは、無料版もダウンロードできます。
無料版は、試用期間のようなものではなく、永続的に無料で使い続けることができます。
また、無料版とは言え、プライベートで利用する場合は十分すぎる機能を有しています。
まとめ
今回は、DaVinci Resolveの「エディットページ」のうち、「合成」についてまとめてみました。
DaVinci Resolveを使用する際のヒントになれば幸いです。