一度使いだすと便利さゆえ手放せなくなることが多い機材に、midiコントローラーがあります。midiインターフェース/フィジカルコントローラーとも言います。これは、特定のDAW専用のもの、複数のDAWに対応しているもの、形・大きさ・役割なども様々です。
今回は、そんなmidiコントローラーの中でも、私がおすすめしたい「FaderPort」を紹介します。
購入動機 と おすすめの理由
DAWの操作は、PCのインターフェースである「キーボード」と「マウス」で実施ができます。そのため「すぐ必要か?」というと、必要ではないと思います。しかし、DAWを操作しているうちに「もう少し○○だったら」とか「××が手間」「微調整が行いにくい」などの欲求が出てくることも少なくないと思います。人によっては「より体感したい」「プロっぽく使ってみたい」という人もいるかもしれません。私もそんな1人でした。「効率よく使いたい」という気持ちから、プロがよく使っているmidiインターフェースに興味が出てきて調べ始めたのが始まりです。
私がmidiインターフェースを検討した際の要求(チェック項目)は、以下になります。
- 複数のDAWを1つのコントローラーで対応できること
- できるだけ多くの操作を1つのコントローラーで対応できること
- フェーダーが付いていること
- エフェクトのパラメータの編集を行えること
- できるだけ省スペースで収まること
- ディスプレイがあること
- 操作が分かりやすく、ユーザーにやさしいこと
これらをどれだけ満たせるか?が購入する場合のカギとなっていました。
そこで色々調査したのですが、やはりなかなか見つからない状況が続きます。というのも、特定のDAW専用で多機能のものは多くあっても、多くのDAWで使用できて多機能のものだと限られてしまうのです。
有力候補は、KOMPLETE KONTROLでした。しかし、当時のKOMPLETE KONTROLは鍵盤ベースです。そのため、コントロールノブ、ベンド/モジュレーションのレバーだけが付いたようなものでした。また、プラグインのコントロールはできるのですが、同Native Instruments の KOMPLETE に限った状況でした。加えて鍵盤については、入手するなら鍵盤に特化した別の機材の方が良かったことや、置き場所のスペースの問題もあり、今回は必要性がありませんでした。ディスプレイもなく、当時はあまり魅力が感じない状況でした。
現状ではディスプレイも付き、WAVESなどの様々なプラグインにも対応しています。そのため、鍵盤を要求するmidiインターフェースの場合は、非常におすすめできます。
そして、あきらめずに探していて見つけたのが、このFaderPortでした。しかも、先述の検討した際の要求をすべてクリアしていました。また、機能が豊富なのにも関わらず、他のmidiインターフェースと比べて手が届きやすい価格帯で、コストパフォーマンスが良いものでした。
そんなFaderPortの中で、用途とサイズ感を検討して購入したのが「FaderPort 8」です。8トラックを同時に操作でき、エフェクトなども操作しやすく、非常に満足している製品です。
今では、類似製品に Platformなんかもあります。Platformシリーズのうちの1つである Nano はFaderPort に酷似していますが、自身の要求を考えると、フェーダーの数が1つでは少ない点がありました。Platformには拡張可能な M+ などのハードウェアもあります。しかし、それぞれのハードウェアがフェーダーのみ、ボタンのみという単機能です。そのため、色々やろうとすると機材の数も多くなってしまいます。そうなると合計金額も高くなってしまいますし、机上をいくつもの機材で溢れてしまうことになります。これは良い点でもあるのですが、私の要求には合いませんでした。
そのため、FaderPortを購入して後悔はしていませんし、安心しておすすめできると思います。同様の要求がある人は、ぜひ候補にしてみて下さい。
FaderPortシリーズの特徴
先述の要求を満たすのは分かったけど、実際どんなものなのか?については、以下でもう少し詳細に説明します。
ユーザーにやさしいハードウェア
FaderPortシリーズは、一連の操作を通して、迷うことなく、直感的に操作することができるなぁと感じました。大半の操作は、いずれかのボタンを1つ押して、パラメーターを変更するエンコーダーを回すことで対応できるのです。
ボタンを見ると、機能で言えば、トランスポート(再生/停止/録音/ループなど)、ズーム(水平/垂直)、スクロール(トラック/タイムライン/バンク)などの操作ができます。ボタンの表示では、各ボタンの機能がしっかり印字されているため、基本動作は取扱説明書を見なくても扱えるでしょう。後述する「FaderPort 8」「FaderPort 16」に関しては、チャンネル(フェーダー)毎に「ミュート」「ソロ」「パン」などの他、フェーダーに割り当ての情報を表示する「ディスプレイ」があります。これらは、DAWのミックスを行う画面に似た配置になっており、あたかもDAWのミックス画面をそのまま動かしているような感覚を得られるでしょう。また、「ディスプレイ」については、表示形式が10種類あります。この違いは、文字サイズやメーターの違いなので、好みの表示を選ぶことができます。
「ミックスのコントロール」「各種トラックのオートメーション・ライティング」に役立つフェーダーは、100mmストロークのモーター・フェーダーです。ムービング・フェーダー/オート・フェーダーとも言います。通常のフェーダーとの違いは、プロジェクトを読み込んだり、コントロールするトラックを切り替えたりする時の動作です。「モーター・フェーダー」は、各トラックのフェーダー位置に「シュッ」というキレの良い音を立てて自動で移動してくれる優れものです。この機能がないと、FaderPortのフェーダー位置から設定値が変更されてしまうので、DAW上で設定していたフェーダー位置からの微調整は難しくなります。この機能だけでも、選ぶメリットとして大きいと思います。ちなみに、移動した時の「シュッ」という音と動作は、なんとも言えない感覚を覚えます。初めて見る人は、思わず「おぉ~」と漏らしてしまうかもしれません。
また、PCとの接続はUSBです。Windows PCでは、プラグアンドプレイが機能し、自動でドライバをインストールしてくれます。そのため、別途ドライバーインストール作業が発生しません。USBケーブルと電源アダプターをつなぐだけで、使うことができます。(DAW側での設定は必要です。)
その他の特徴では、「フットスイッチによる操作」「midiでDAWをコントロール」「フェーダーの位置・感度の調整」「ディスプレイのコントラストの設定」なども行うことができます。
より効率よくリアルタイムに
オートメーション(音量、エフェクト、プラグイン、その他のパラメータを自動で変化させるための情報)を記録していく際に一番実感できると思います。FaderPortのような機材を使わないと、マウスで一つ一つ入力していかないといけません。実際の楽曲に施す際は、この量は膨大です。それをいちいちマウスで打ち込んでいくのは途方もない作業です。そこで、このFaderPortを使用することで、この手間と工数(時間)から解放してくれます。記録(Write)の状態にして録音することで、設定を行いたい任意のパラメータをリアルタイムに記録させることができるのです。
様々なDAWに対応
3つのプロトコルのいずれかを使用することで、主要な多くのDAWをコントロールすることができます。どのDAWに対しても基本的なトランスポート(再生・停止・録音・ループなど)やミックス作業を行うことができるのです。複数のDAWを使用する人にとっては、このプロトコルの切り替えのみで同じmidiインターフェースを使うことができます。この切り替えは、特定のボタンを押した状態で電源ONすることで行います。
具体的にどんなDAWが使えるかを以下に記載します。以下に載っていないものでも、自身でカスタマイズすることで使用できる場合があります。
プロトコル | DAW | メーカー |
Native(Studio One) | Studio One | PreSonus |
HUI | Pro Tools | Avid |
MCU > Logic | Logic Pro | Apple |
MCU > Cubase | Cubase | Steinberg |
MCU > Cubase | Nuendo | Steinberg |
MCU > Ableton | Live | Ableton |
MCU > Sonar | Sonar | Cakewalk |
MCU > Logic | Digital Performer | MOTU |
これらのDAWのうちで同PreSonus社のStudio Oneについては、同じPreSonus製品ということだけあって 最も最適化された操作を体感できます。しかも、FaderPortを購入すれば Studio One Artist がバンドルされているため、すぐに Studio One を使用して楽曲制作ができるというメリットもあります。
注意しなければならない点としては、Studio One ではないDAWを使用した時です。各種ボタンの操作結果・機能使用可否は使用するDAWによって異なってきます。また、発売当初はバグもあって思うように動かないこともありましたが、この点はファームウェアアップデートにより改善されてきています。これらの点については、事前に確認しておくと良いかもしれません。
バリエーションが豊富
FaderPortでは、用途に合わせて、以下の4タイプがあります。
FaderPort | FaderPort8 | FaderPort16 | ioStation 24c | |
電源 | 電源アダプター | 電源アダプター | 電源アダプター | 電源アダプター |
フェーダー | 1 | 8 | 16 | 1 |
ディスプレイ | なし | 8(フェーダー毎) | 16(フェーダー毎) | なし |
Fnボタン | あり | あり | あり | あり |
用途 | DAWコントロール | DAWコントロール | DAWコントロール | DAWコントロール オーディオインターフェース |
サイズ | D:230 mm W:140 mm H:44.45 mm | D:301 mm W:334 mm H:57.2 mm | D:302.26 mm W:497.84 mm H:53.59 mm | D:244 mm W:172 mm H:61 mm |
※「ioStation 24c」については、FaderPortにオーディオインターフェースの機能を備えたような位置づけのため、合わせて紹介しています。
「コンパクトに済ませたい」「小規模プロジェクトのみで使用」「1フェーダーで対応したい」という方には「FaderPort」をお勧めします。「複数トラックを同時に扱いたい」「ミキサーのように扱いたい」という方には「FaderPort 8」「FaderPort 16」が良いでしょう。なお、「FaderPort 8」と「FaderPort 16」の差は、トラック数の違いだけです。そのため、どれだけの数のトラックを対象とするかどうかで、選ぶものも変わってきます。
なお、選択の際は、サイズにも気を付けて下さい。私が持っている「FaderPort 8」でも、約30cm x 約30cmの大きさです。一般的な勉強机で言えば、1/3は作業スペースが取られてしまいます。そのため、想像以上に置き場所を考慮する必要があるかと思います。
ファームウェアアップデート
こういった音楽機材の大半は、当然売って終わりではありません。FaderPortも例外ではなく、報告されてくる不具合は継続的に改善して、定期的にファームウェアがリリースされます。
FaderPortのファームウェアアップデートでは、FaderPortだけでは完結できずPCを経由することになります。「UniversalControl」と言うツールをPCにダウンロード ⇒ インストール ⇒ 起動し、FaderPortをPCに接続することで対応します。PCに接続することで自動的にバージョンが認識され、アップデートの必要があればそのままインストールすることができます。
なお、「UniversalControl」をインストールする際に、PreSonus製の製品の多くのドライバーをインストールするか選ぶことになります。FaderPortを使うだけであれば、これらのドライバーをインストール必要はありません。チェックを外しておきましょう。
まとめ
今回は、midiインターフェースの中でも多くのDAWを操作できる「FaderPort」について記載しました。
FaderPortは、高効率化が期待でき、かつ直感的にDAWの操作できる機器です。定期的なファームウェアアップデートも行われています。発売当初は発生していたような不具合も改善されてきています。
- 複数のDAWを1つのコントローラーで対応したい
- できるだけ多くの操作を1つのコントローラーで対応したい
- モーター・フェーダーを使いたい
- エフェクトのパラメータの編集したい
- 操作が分かりやすいコントローラーが欲しい
このような希望があれば、まず候補として検討してみて下さい。
参考リンク
midiインターフェースについて、より詳しく知りたい方は、以下もご覧いただければと思います。