ディレイの役割・効果とおすすめ品

今回話題とするのは、エフェクターのディレイです。このエフェクターは、様々な場面で活躍し、プロの方のエフェクターボードにも高確率で入っていると思います。ですが、市販品も多く、購入する場合は何機種か試し弾きすくことも多いでしょう。使用方法が多いゆえ使い方も迷うかもしれません。

そんなディレイについて、以下にまとめていきます。

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導入効果

根本は「遅延による残響を演出する」ということです。一見残響の演出のみに見えますが、この効果の利用方法は多岐にわたります。ポップス/ジャズ、ソロフレーズ/バッキングなど、ジャンルも弾き方も問いません。
設定の基本形は2つあります。時間差をほぼ感じない「ショートディレイ」とはっきりとやまびこのように時間差を感じる「ロングディレイ」です。また、様々な効果を得られるいくつかのモードがある機種があります。

ロングディレイで、伸びのある音に

原音に続けて音を足すようなイメージで疑似的に伸びのある音にすることができます。歪み系ディストーションやオーバードライブと組み合わせることで、より伸びのあるソロフレーズになります。また、バラードではアルペジオに足すと、効果的にサスティーンを得ることができます。

ショートディレイで、音圧アップ

短い間隔で原音を再生することで、疑似的に同じ音を足すようなイメージです。同じ音を足すため、音圧も増すことになります。この効果を求め、ショートディレイはクリーンの音などに対して常にかけている場合もあります。また、同じ歪の音でサビだけ音圧を上げたいといった時にかけることもあります。

ショートディレイで、リバーブの代用

原音に続けて音を足すようなイメージなので、遅延時間をコントロールすれば、残響音として扱うことも可能です。ただし、あくまでリバーブの代用であり、リバーブそのものの効果とは異なる反響音です。やまびこのような反響音と考えた方が近いイメージだと思います。

ディレイにしかできないフレーズ

代表的なものは、デジタルディレイ(後述)を用いて付点8分音符のリズムで鳴らす方法です。EDMのような独特なフレーズになります。他のモジュレーション系の後にかけるなど、工夫次第で面白い効果を得られるでしょう。

リバースなどの独特な空間演出

多機能ディレイによく搭載されている「リバース」というモードを使うことで、シンセサイザー的な幻想的な空間を演出することもできます。音がだんだん大きくなっていくので、リバースシンバルのように空気感を持たせたイメージでしょうか。

動作原理

基本的な原理は、「入力された音を記録し、繰り返し再生する」ということです。設定値を通して、動きを説明していきます。

LEVEL

原音ではなく、エフェクト音(Wet音)の音量の設定です。機種によっては、「E.LEVEL」「MIX」と記載されている場合もあります。基本的には、反時計回りで入力音(Dry音)が強くなり、時計回りでWet音が強くなります。基本的には、Dry音の方がWet音より小さくなるように設定します。

TIME

遅延した音が鳴る時間の間隔の設定です。やまびこが返ってくる間隔です。この値が短ければ「ショートディレイ」、長ければ「ロングディレイ」となります。「コントロールノブで感覚的に調整するもの」「数値を指定できるもの」「音符の長さで調整するもの」の3つのパターンがあります。数値の場合はほとんどが[msec]です。

FEEDBACK

返ってくる音の繰り返し回数の設定です。「REPEAT」と記載されている場合もあります。反時計回りで繰り返し回数は少なくなり、時計回りで多くなります。

MODE

ディレイ音の「質」や「変化」を切り替えるものです。エフェクターによっては、搭載していないものもあります。設定項目の例としては、アナログディレイ(後述)とデジタルディレイ(後述)、リバース(先述)などを切り替えられる場合があります。また、先述のTIMEの最大遅延時間を変えられる場合もあります。

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アナログとデジタルについて

特にディレイについては、エフェクターの中でもアナログとデジタルを意識する必要があります。ここからは、その違いについて説明していきます。これらは、どちらが良いというわけではなく、その音の特性で好きな方を選ぶと良いです。

アナログディレイ

音の特徴は、「劣化する」「暖かい」「とげとげしくない」「馴染みやすい」という言葉で表せます。そして、音は自然に小さくなって消えていきます。

音が小さくなるのは、Bucket Brigade Delay device(BBD)というICを用いているがゆえです。BBDというものは、簡単に言えば「バケツリレー」を行います。受け渡しの際に、すべての情報を渡すことができず少しずつこぼれていきます。それゆえ、だんだん音が小さくなっていくのです。

「とげとげしくない」「馴染みやすい」と言う点では、バラード、ポップス、ロックなど幅広いジャンルで活用できるディレイと言えます。また、クリーンからハードな歪みまで音色の点でも幅広く組み合わせやすいです。

デジタルディレイ

音の特徴は、「劣化しない」「冷たい」「固い」「クリア」という言葉で表せます。DSPチップによって生み出されているので、より機械的な音になります。そのため、バラード系や聴かせるような暖かみのある曲に用いると、目立ちすぎる傾向があります。

先述のディレイにしかできない付点8分音符のリズムで慣らしたりする際は、デジタルディレイの方が適していると思います。またジャンルで言えば、ロックやハードな歪みのように攻撃的な曲、EDM系の曲などに使われることが多いと思います。ポップスなんかは、基本はアナログでここぞいう時に使うと良いでしょう。

また、デジタルの特徴としては、最長のディレイタイムがアナログよりも長いことが多いです。30秒以上など非常に長い機種もあります。そして、アナログをモデリングしたものもあるので、選ぶ際の1つの基準としても良いと思います。

接続順

基本的には、揺らぎを与えるモジュレーション系の後です。ですが、歪みとモジュレーション系の間でも問題はありません。モジュレーション系の前だと広がりがある様々な音が作れるので、色々試してみると良いでしょう。

商品紹介

最後に、私がオススメできるものを紹介しようと思います。ディレイについては、様々な機種があって本当に多岐にわたります。そのため、紹介するものも多めになってるの

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定番のディレイ

BOSS:DD-7

大定番のデジタルディレイです。購入せずとも、試奏したり動画を見て、一度はその音色を聴いてみると良いでしょう。

コントロールノブは、「E.Level」「F.Back」「D.Time」「Mode」の4種類とシンプルです。モードについては、「ANALOG」「REVERSE」の他、揺らぎを加える「MODULATE」も搭載しています。また、ディレイタイムの最大値を「50ms」「200ms」「800ms」「3200ms」から選ぶこともできます。外部接続したアンラッチタイプのフットスイッチ(FS-5Uなど)を使用して、音符のテンポ(ディレイタイム)をタップテンポで決めることもできます。

また、BOSS全般的に言えますが、他のどのメーカーよりも暖かみがある音になります。これはデジタルディレイでも言えることです。そのためBOSSのディレイについては、デジタルでも幅広いジャンルで使いやすいディレイとなっています。

大定番でシンプルな操作性のデジタルディレイ

BOSS:DD-3T

長い間支持を得ていたDD-3の後継機です。改良点は2つあり、「タップテンポ対応」「ダイレクトアウト端子の位置の変更」です。

「ダイレクトアウト端子」とは、Dry音とWet音を別々に出力する際にDry音を出力する端子で、場所が入力側から出力側に変更されています。ハイエンドラックエフェクターなどにみられる出力方法がコンパクトエフェクターでできる利点は大きいです。

長い間支持を得ていたDD-3の後継機

BOSS:DD-8

先述のDD-7の後継機です。この機種の主な変更点は、「モードを11種類に増やし、内容も一新」「キャリーオーバー・スイッチを搭載」「3つのステレオ出力モードを搭載」です。コンパクトサイズでは、とにかく他の追随を許さないほどの多機能さと実用性を兼ね備えたものになっています。

モードでは、最大ディレイタイムの設定を削除しています。代わりに、最大ディレイタイムは10秒になっています。追加されたモードの中には本機種のために新開発されたものもあります。ルーパーは、最大40秒の録音/オーバーダブが可能です。ただし、これはモノラル使用時であり、ステレオ使用時は最大20秒になります。

キャリーオーバー・スイッチは、エフェクトをOFFした際にディレイ音を残すか、残さないかを選択可能なスイッチになっています。

出力モードは、通常のステレオ入出力の他、音の出力先が左右で切り替わるパンニング、空間の広がりのニュアンスを追加するワイド・ステレオが使用できます。

他の追随を許さないほどの多機能さと実用性を兼ね備えたDD-7の後継機

BOSS:DM-2W

生産完了品のアナログディレイ:DM-2の改良版のような位置づけで、技CRAFTシリーズのディレイです。

「生産完了品のMD-2と同等の音質」と「現代風の音質」を切り替えられるようになっています。「現代風の音質」と言うのは、アナログの良さを持ちつつクリアな音質も兼ね備えたものになっています。また、ディレイタイムが最大800msとなっています。

生産完了品のアナログディレイ:DM-2の改良版

TC Electronic:Flashback2

TC Electronic の傾向は音質に強いこだわりをもち、空間系に定評があるメーカーのうちの1つです。全体的に、透明感のあるキレイな音が得られます。

本エフェクターではテープ、アナログリバースに留まらず、ルーパーやクリスタルと言ったモードも搭載しています。テンポは、四分音符、付点八分音符、四分音符+付点八分音符で切り替えることもできます。また、エフェクター内部のディップスイッチによって、トゥルーバイパスとバッファードバイパスを切り変えることも可能です。ステレオ入出力に対応していることも大きいでしょう。ステレオ入力に外部スイッチを接続してタップテンポを行うことも可能です。

そして、本エフェクターでの特記すべき機能としては、「TonePrint Editor エディター」というメーカー独自のソフトウェアを使用して、より細やかなパラメーター調整ができ、3つまで登録できます。さらに、フットスイッチは踏む強さによって、エクスプレッションペダルのように扱うことも可能です。よりユーザーに寄り添ったエフェクターと言えるでしょう。

音質に強いこだわりをもつ、TC Electronicのディレイ

おすすめのディレイ

BOSS:DD-500

DD-20(後述)の後継機種にあたるのが、DD-500です。

12種類のモードの他、MIDIにも対応しており、より現代の音楽シーンに活用できる仕様になっています。そして保存できるメモリの最大数は、297と十分な量です。また、32bit浮動小数点演算/96kHzサンプリングレートで処理され、スタジオクラスに近い艶やかで透明感がある音を得ることができます。最大ディレイタイムは10秒ですが、ディレイと同時使用可能なルーパーを搭載しています。ルーパーの最大録音時間は、60秒(96kHz/MONO、48kHz/STEREO)、120秒(48kHz/MONO)です。

その他、TC Electronic Flashback2と同様で、トゥルー・バイパスとバッファードバイパスを切り替え可能です。専用のエディターソフトもあります。フットスイッチだけでなく、エクスプレッションペダルを利用できるのも利点でしょう。

DD-20の後継機種で、より現代の音楽シーンに活用できる仕様に

Strymon:El Capistan

数多くのプロからも定評のあるStrymonから発売されているテープエコーシミュレーター(※)です。

本エフェクターは、テープエコーならではの太く、温もりのある音で、幅広いジャンルで使用されています。テープの劣化具合も再現します。デジタル技術ではありますが、アナログディレイを高精度で再現したエフェクターです。

本品の特徴としては、3種類のテープヘッド(固定・複数・スライド式)とヘッド位置(スライド式はモーター速度)を組み合わせ、9種類のモードが存在します。これらにより、幅広い自分だけの自由なプリセットが作れます。プリセットも1つだけですが、本体に保存しておくことが可能です。さらに特記すべきは、本機種はデジタル回路とアナログ回路で構成されていることです。Dry音とWet音のミックスはアナログ回路内で行なわれています。Dry音に関してはアナログ回路のみを通る回路構成のため、オリジナルの音質を損ないません。

※テープエコーは、アナログディレイの基となった機材です。

太く、温もりのある音を演出するテープエコー

ハイエンドのディレイ

Strymon:TIMELINE

こちらも「El Capistan」同様Styrmonのディレイエフェクターです。プロギタリストのエフェクターボードによく組み込まれています。現行品で「音質」「多機能」などで、これに勝るものはないと思うほど、高音質で何でもできます。

本エフェクターは、12種類のスタジオ・クラスのモード(TYPE)と7種類のコントロールを搭載しています。デジタル信号への変換は24bit/96kHzで、内部演算は32bit浮遊演算で行われるため、非常に高音質です。プリセットについては200個の内蔵のものがあり、上書きする形で各々の設定を保存します。これらは、フットスイッチの他、MIDI信号で呼び出すことが可能です。音作りについては、「NIXIE」という専用ソフトウェアを使用して細かく作りこむことも可能です。

ただし、(ここまで褒めて言うもの気が引けますが、)個人的にはテープエコーのみを求めるなら、先述の「El Capistan」が勝っているように感じます。使用している技術に変わりはありませんが、本機のテープエコーはシングルヘッドタイプに限定されているためです。しかし、代わりにdBucketと言うモードがあります。BBDの全特性を忠実に再現し、アナログペダルからスタジオレベルの音質まで幅広く表現できるモードです。

これに勝るものはないと思うほどの「高音質」「高機能」
NIXIEについて
本ソフトウェアでは、プリセットの管理やファームウェア・アップデートなどもできます。ただし、ファームウェアバージョンが V1.77 より古い場合は、一度「Strymon プリセット・ライブラリアン・ソフトウェア」でアップデートする必要があります。
また、注意すべき点は専用のUSB-MIDIの変換ケーブルが必要になります。現行品では、「Roland UM-One」が使用できました。オーディオインターフェースでも良いとの記事が見受けられましたが、UADのオーディオインターフェースでは実施することはできませんでした。
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Eventide:Timefactor

Eventideは、ラックエフェクターに相当する音質と機能を持ったエフェクターが多いメーカーです。ディレイの他にも、PitchfactorH9H910 Harmonizerなども有名です。エフェクト音は非常にクリアな音で、太さもあり埋もれにくいです。なお、PitchfactorもDelayエフェクトは付いていますが、ピッチシフト系なので詳細は割愛します。H9は、Eventideの「TimeFactor」「ModFactor」「PitchFactor」「Space」を全て搭載したものです。

メモリは全部で100個でMIDI制御も可能です。最大ディレイタイムは3000msで1msごとに設定することができます。モードは10種類搭載しており、ルーパーもあります。モノラル音源での録音になりますが、最高音質で12秒録音、音質を調整することで最大48秒の録音が可能です。音質調整ができるルーパーは他にはないと思います。

Timefactor独自の特徴は、独立した2つのラインが搭載されていることです。そのため、別々にディレイ効果をかけることができ、あたかも1台で2つのディレイを扱っているように使用することができます。

ただし、注意点もあります。電源が一般的なエフェクターと極性が異なってプラスマイナスが逆になり、センタープラスです。通常のパワーサプライを使用すると壊れる可能性もあるため、付属のアダプターを使用するのが良いでしょう。その方がTimefactorの本来の音を得ることにもつながります。

非常にクリアで、太さもあり埋もれにくいエフェクト音

FREE THE TONE:FT-2Y

プロ向けのカスタム製品を数多く扱うFREE THE TONEのディレイです。非常に高音質かつ多機能なモデルになっています。プロ向けカスタム製品を作成しているノウハウもあり、本当に必要な機能に絞って力を入れている印象です。

FT-2Y独自の特徴は、2つあります。1つ目は、コントロールノブが1つもない点です。2つ目は、リアルタイムにテンポを検出してディレイタイムを自動で調整してくれる点です。調整できる誤差は、±20%のようです。また、ディレイタイムをあえてずらすことも可能になっています。このような特徴を持つエフェクターは他にないでしょう。慣れてしまったら、きっと他のエフェクターは使えないと思います。

プロ向けのカスタム製品を数多く扱うFREE THE TONEのディレイ

生産終了品の名器

BOSS:DD-20

DD-500(先述)の前身機です。多機能ディレイの火付け役ともいうべき存在です。販売終了した今でも好んで使用しているユーザーはいます。現行当時はプロも良く使用していた定番の機種で、名器に属します。

本エフェクターはツインペダル仕様で、誤操作の少ないシンプルな操作性を持ち合わせ、プリセットは4つ保存できます。ディレイタイムも、当時では長い23秒まで設定可能です。モードは11種類搭載し、独自のオシレーター効果を生む「TWIST」、自然な残響を生む「SMOOTHY」と言ったものも存在していました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?ディレイは「遅延を発生させる」という単純な効果です。しかし、様々な場面で活躍し、エフェクターボードにあれば、表現の幅が一気に広がります。ユーザーが多い分、現行品の種類も非常に多く、数あるエフェクターの中でも多機能タイプが多い種類です。本記事が皆様の参考になれば幸いです。

ディレイ以外のエフェクターについては、以下も参考にしてみて下さい。

エフェクターの種類って、どんなものがある?

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