【おすすめ】アンプシミュレーターの第3の選択肢~Neural DSP QUAD CORTEX~

現在、アンプシミュレーターに属するようなハイエンド機が様々な出回っています。

その中でも、プロがこぞって使用するような機種でかつ欠品が続いているものに、Neural DSP社の「QUAD CORTEX」があります。Youtubeでも活躍されているギタリストの山口和也さんも紹介されてギタリストの間で話題になったプロセッサーです。ちなみに、正確には、アンプの「シミュレーター」ではなく「モデラー」となっています。

今回は、そんな「QUAD CORTEX」を何とか入手できたので、紹介しようと思います!

質問がありましたら、遠慮なくどうぞ!

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QUAD CORTEX」を取り巻く環境

Neural DSP社って?

Neural DSP社は、アンプシミュレーターやベースプリアンプのプラグインを制作・販売の分野で評価を得ている会社です。販売サイトは、こちら

今回販売された「QUAD CORTEX」は、このプラグインのノウハウを活かし、制作・販売された同社で初めてのハードウェア機器となります。

この話を聞いた時は、以下で紹介したUniversal Audio社の「UAFXシリーズ」を思い浮かべました。必然的に期待感も増します。

【おすすめ】UNIVERSAL AUDIO から販売されたエフェクター:UAFX PEDAL

市場の動向は?

本製品は、2020年1月17日~20日で開催された NAMM SHOWで登場した機種です。

その後延期に次ぐ延期を重ね、初回は1,000台を出荷したようです。日本では6/8に発売されました。しかし、国内の台数はごくわずか。この時の価格は、23万台のようです。

2回目の出荷は、7月中旬以降。しかし、半導体不足などの影響で、1回目の出荷直後に値上げが公表されました。(公式サイトのリンク)そのため、この時点での価格は257,000円・・・

ちなみに、現時点では、プロにも満足に行きわたらない状態のようです。

3回目の出荷は、いつごろか・・・と言う所ですが、年明け 2022年2月以降という話があります。。。この時は、さらに値上がりし、30万弱になってそうな気がします。。。

競合他社との関係

今市場に出ていて、プロも使用しているようなハイエンド機材であるアンプシミュレーター/マルチエフェクター/プロセッサーは、何を思い浮かぶでしょうか?

  • Fractal Audio:Axe-FXシリーズ
  • Kemper Profiling Amplifier:Kemperシリーズ

が思い浮かぶのではないでしょうか?

「QUAD CORTEX」には、両者との類似点も存在します。例えば、Fractalのように縦横無尽なルーティングやクリアな音質、Kemperのようなアンプのコピー機能などです。もちろんファームウェアアップデートによって、アンプ/キャビネット/エフェクトの種類は今後増えていきますし、動作の改善もされるでしょう。また、複数のインプットを搭載しているので、同時に複数人で利用することが可能です。対応する楽器も、「ギター」だけではなく、「ベース」「アコギ」などにも適しています。

そのため、音質・機能などの面から、今回取り上げる「QUAD CORTEX」はこれらの中間に位置していると個人的には考えています。後発であることも優位に働き、両社の良い所取りの存在と言っても良いかもしれません。

QUAD CORTEX」の特徴

他の製品にはない本製品の特長は、以下が挙げられると思います。

  • 独自のAIテクノロジー
  • サイズ・重量・形状
  • DSPの能力
  • フットスイッチ
  • 大型タッチディスプレイ
  • 3つのモード
  • Wi-Fiモジュール搭載

独自のAIテクノロジー

単に「AIテクノロジー」と言っても「何に活用されるの?」という疑問が出てくると思います。QuadCortexでは、AIはアンプのコピー(語弊があるかもしれませんが…)に使用されます。先述のAxe-FXシリーズ、Kemperシリーズでも、アンプをコピーする機能はあります。それぞれのコピーの方法は、以下になります。

シリーズ方法
Axe-FXシリーズ「インパルス応答(IR)」と「DSP」によるアンプモデリング技術を利用
Kemperシリーズ「プロファイリング」を利用

マイク取りなどを任意でセッティングし、伝達関数を用いた演算でリアルな音響特性をそのままコピーする

QUAD CORTEX
「AIによる学習と再現の技術」と「インパルス応答(IR)」を利用

前例にない高精度で音を認識し、人間の知覚に合わせて自然なサウンドを再現

加えて、1つどうしても記載しておきたいことが、「QUAD CORTEX」ではエフェクターのみでも音をコピーできます。ただし、歪系のエフェクターに限ります。エフェクターのノブの位置などの使う設定が決まっているのであれば、コピーをしておくことが可能です。もはや、これ1台持っていけば十分なのです。完結します!

サイズ・重量・形状

サイズは、29cm x 19cm x 4.9cmと非常に小型になっています。重量も2kg弱です。しかも、フロアタイプです。

Axe-FXシリーズ や Kemper は、3Uサイズのラックタイプであったり、どうしても5kgを超えてしまいます。そのため、容易に持ち出すことも難しい代物と言えます。通常のエフェクターボードでも、いくつもエフェクターをつなげば簡単に2kgなんて超えてしまいます。ARMOR製などの頑丈で耐久性のあるエフェクターボードであれば、エフェクターを載せていない状態でも、2kgを超えてしまうものもあります。

この品質レベルで、同等の製品の中では、圧倒的な優位点になるかのではないでしょうか?

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DSPの能力

「DSP」はデジタル信号を処理する演算装置で、搭載されている機器の処理能力に直結する部分です。特に音声処理に向いています。この処理能力は「クロック周波数」や「コア数(DSPの数)」により、変わってきます。AI処理ではディープラーニングという技術を使用しますが、これに耐えうるには非常に高い処理能力が求められます。

「QUAD CORTEX」で搭載されているDSPは専用のもので、4つの「SHARC®+」と 2つの「ARM Cortex-A5」(合計6つのコア)から成っています。「ANALOG DEVICES社:SHARC+」については、クロック周波数は2GHzの能力を持っています。ネット上では、iPhone 7 が同等の処理能力(4コア/2.33GHz)を持っているとの情報もちらほら見かけました。

そこで、DSPの処理速度を売りの1つにしている Axe-FXⅢを調べてみました。Axe-FXⅢは、Texas Instruments製DSP “KeyStone”を採用しており、これは8つの「SHARC チップ」の能力に相当するようです(情報元)。Fractal社の同じフロアタイプである FM3 では「ARMコア x 1とSHARC +コア x 2」から成る3コアの “Griffin” DSPを搭載しており、これよりは処理速度は高そうです。

しかし、単にDSPの処理速度だけで判断すると間違った判断をし兼ねないので、Fractal Axe-FXⅢとQUAD CORTEXの性能を同じブロック数での処理を想定し、比較してみました。あくまで1つの考え方です。

Fractal Axe-FXⅢでは、エフェクトを置く場所(ブロック)が84個(14×6マス)あります。これを処理しています。「QUAD CORTEX」ではどうでしょう?32個(8×4マス)のブロックになっています。同程度のDSPで対応するブロック数を単純に考えれば、Fractal Axe FXⅢでは41個、「QUAD CORTEX」では32個です。このことから、安定性を見るとQUAD CORTEXに分があるように感じますし、実際の用途を考えてみれば32個あれば十分だと思います。実際に、Axe-FXⅢで複雑なルーティングをお試しで組んでみたこともありましたが、最終的には20マスでも十分と言った感じでした。エフェクトを設定せずに、原音しか通さないルートを入れてもです。

フットスイッチ

「フットスイッチ」と「大型タッチディスプレイ」です。本機の特徴として、フットスイッチがコントロールノブを兼ねていることが挙げられます。フットスイッチには滑り止めのギザギザが付いていて、Drive / Volume / EQなどのノブのように回転させることができます。フットスイッチとコントロールノブを一体化させたことで、製品を小型化することに成功しました。この発想はあったでしょうか?


なお、コントロールできるパラメータはブロック毎に決まっており、それぞれのパラメータが8つの各々のフットスイッチに固定で決められています。

大型タッチディスプレイ

また、コントロールが削減されたため、「7インチ(約15.5cm x 約9cm)」のディスプレイを搭載することも可能にしました。画像だと分かりにくくて申し訳ないですが、画質が細かく、バカみたいにきれいです。(←言葉遣い注意・・・)

しかも、「タッチディスプレイ」であることは驚きです。このタッチディスプレイ内で「ドラッグ」や「タッチ」を行うことで、ルーティングの各種設定(エフェクトの追加・削除、エフェクトの切り替え、配線の追加など)が行えます。


また、エフェクトなどを色々いじってて知ったのですが、本機種に搭載されているEQにはパラメトリックのものがあります。実際に使ってみると、以下のような画面で設定を行え、画面上部の①~④を自由に動かすことができます。そのため、DTMを行う際に、Wavesなどで同種のプラグインを使用するのと何ら変わらない操作感で、視覚的かつ直感的に調整することができそうです。これ、非常に便利です。

3つのモード

QUAD CORTEX には、以下の3つのモードが備わっています。それぞれの特徴に基づいて、あらゆるプレイスタイルに対応することができます。

モード名説明
STOMP MODEこのモードは、決まったエフェクターを直列に並べて、1つ1つ操作するイメージです。

プリセット上に組んだアンプやエフェクト(ブロック)の並びにおける、個々のブロックを8つのフットスイッチ(A~H)にアサインし、On/Offの切り替えを行います。

それぞれのフットスイッチがエフェクターのOn/Offのスイッチの役割を担うということです。

SCENE MODEこのモードは、決まった並びのエフェクター群のOn/Off を Free the toneのARC-3などのループスイッチャーで、一斉に切り替えるイメージです。

競合他社では、Axe-FXシリーズのルーティング方法である各シーンとプリセットの関係が相当します。

エフェクターの並びは、バンク毎に決まっていますが、その並びのうちの複数のブロックのOn/Offを同時にフットスイッチで切り替えることができます。また、On/Offだけでなく、個々のブロックにおけるパラメーターを変更することも可能です。

エフェクターの「On/Off」「パラメータ」の切り替え処理のみなので、通常のエフェクターのOn/Offと同じような最小限の音切れで切り替えることができます。そのため、よりライブなどに適したモードかと思います。

PRESET MODEこのモードは、エフェクターの並び事態をごっそり変えるイメージです。

競合他社では、Kemperシリーズのルーティング方法であるパフォーマンスとRigの関係が相当します。

1つのバンクに設定できるエフェクターの並びは、固定ではありません。1つのバンクの中で、8つのシステムを利用することができるのです。

そのため、全く異なるアンプを使用したり、配線やエフェクターが異なる複数のエフェクターボードを同時に扱うことが可能になります。

ただし、デメリットとして、エフェクターの配列を変えるため、どうしても音切れが発生し、ライブの曲中での変更はタイミングを考慮する必要があるかと思います。

Wi-Fiモジュール搭載

「QUAD CORTEX」は、なんとWi-Fiモジュールを搭載しています。これにより、PCを使用しなくてもタッチディスプレイ上で、「アカウントの設定で登録したフレンド間でのプリセット共有」「クラウドへのバックアップ」「ファームウェアアップデート」が可能になっています。ただし、事前に「Wi-Fiの設定」と「Neural DSP」のアカウントが必要です。

ハードウェア機器からのデータのインポート/エクスポートができるものも限定されるでしょうし、ましてやPCを使わずに済むというのは、大きい優位点でしょう。

今までこんな商品があったでしょうか・・・?

商品リンク

競合他社の機能をコンパクトに凝縮したフロア型モデラー

まとめ

市場にはいくつものアンプシミュレーター/マルチエフェクター/プロセッサーがあると思います。その中でプロも使用するようなハイエンド機は限られてきますが、この機材は非常におすすめできるものの1つだと思います。

ですが2021/10時点では、国内にはほとんど入って来ず、プロの方々にすら行きわたらないようなものです。フリマアプリ/オークションサイトで出てはいますが、定価以上の価格ですよね・・・そのレベルの代物で、フロアタイプのハイエンド機がほしいのであれば、これ一択ではないでしょうか?

これから、Fractal や Kemper 購入しようと検討している人は、この「Neural DSP QUAD CORTEX」も候補に入れると良いかと思います。むしろ、35万を超えている Fractal を購入するなら、こちらの方が良いかもしれません。個人的には、Fractal 危うし・・・と思っています。

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