【おすすめ】VUメーター:HAYAKUMO FORENO~音量感にものさしを~

DTMを行う上で、特に発振しない人には、あまり気にされないであろうものの1つに、VUメーターというものがあります。

VUメーターは、ある曲(オーディオ)データの音量感を示すツール(測定器)です。

今回は、そんなVUメーターの中で、注目されている「HAYAKUMO FORENO」についてまとめてみます。

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VUメーター導入のメリットは何なのか?

簡単に言うと、「感覚頼りだった作業を、明確な指標(ものさし)に基づいて対応できる」です。

全員が同じように判断できるように

音の感じ方というのは、人によって少なからず変わってきます。これは、全く同じように聴こえている音の好み(低音が強い/弱いなど)の話だけではありません。

人によっては「生まれつきある帯域が聞こえにくい」ということもあるでしょう。人は、元々低音成分が、本来の音量よりも聞こえにくい(感じにくい)ということもあります。

また、音楽に携わっており、大音量に常にさらされ、耳が弱ってしまっているなんてこともあると思います。

さらには、聞く環境によっても、聞こえる音の響きが異なります。

そのため、他の人の聴こえ方を全く同じように感じることはできないでしょう。「その音が本当はどんなものなのか?ということは、誰にも分からないこと」だと言えると思います。

そんな時に、音量を「耳で感じる」「体で感じる」のではなく、電圧値として「目で見る」ことで、定量的な判断ができるというのが、このVUメーターです。これであれば、全員が同じように判断ができると言えます。

ミックス時などで、一定の基準を

例え同じように聞こえるミックスをしていたとしても、VUメーターで見ると全然異なる触れ方をする場合があります。例えば、ある曲は全体的に大きい音で、ある曲は小さめの音で調整されていると言った場合です。

配信・配布する媒体によって、許容できる音の範囲が異なって来るのが常です。コンプレッサーでいうと、この許容できる音の範囲の上限は「しきい値」です。

そのため「大きい音で作った楽曲」と「小さい音で作った楽曲」では、同じ媒体に出力・録音した場合、「大きい音で作った楽曲」の方が潰れてしまうことは想像に難しくないでしょう。

こういうことを避けるためにも、視覚的に一定の基準が分かることは非常に有利になるのです。

DAWのプラグインで十分ではないか?

このVUメーターは、DAWのプラグインソフトでも存在しています。しかし、あえてアナログ機材を使う理由として、以下の2つがあります。

  • 音声信号の種類
  • 反応速度

多くのプラグインはデジタルの情報を基に動作しているため、どうしても人間が直接聞く音の情報とは異なりますし、針も機敏に動いてしまう傾向があります。そのため、瞬間的な動きに強く、ピークメーターに近い動きだと思います。

しかし、アナログのVUメーターを用いた場合ですと、その情報はアナログ信号であり、スピーカーなどから出てくる音に近い音になります。

また、人間が体感する音に近い反応(針の反応速度:300ms(0.3秒))で動いてくれます。瞬間的な反応には弱いですが、平均的な音量を人間が感じる感覚で捉えることができると思います。

そのため、特に「ミキシング/マスタリングを主にしている人」「音楽で稼ごうとしている人」については、アナログのVUメーターを利用するメリットはあると考えています。

HAYAKUMO/代表者:早雲健悟さんについて

2016年より東京の世田谷に拠点を置き、ユーザーと共に磨き上げられた楽器、音響機器等の開発や製造を行っています。

ユーザーの「意見」「求めている本質」を見極め、ユーザー目線を大前提とした唯一無二の「ものづくり」をされているようです。

代表者の早雲健悟さんは、元Vestax社員で、現在はDJ機材やレコードの通信販売を行う専門店『OTAI RECORD』が運営する音楽スクール『OTAIRECORD MUSIC SCHOOL』で校長を務めておられる方です。

そんな早雲さんが立ち上げたのがこのHAYAKUMO ということです。

初めにVUメーター『FORMA』を開発し、その改良版が今回の話題となっている「FORENO」です。

「FORMA」の誕生秘話も、COLDFEETのWatusiさんから「こんなのがあったらいいなぁ~」なんていう話からのようです。(https://block.fm/news/hayakumo_forma より)

HAYAKUMO FORENOについて

では、そんなHAYAKUMOで作られたVUメーターのFORENOの特徴についてまとめます。

外観

幅221mmというコンパクトな設計で、両面のウッドパネルによりデザイン性が際立ちます。

見やすさでは、フロントパネルを10度傾けているため、照明はオレンジに近い暖色のLEDを使用していますので、一般的な平面のVUメーターよりも視認性が向上が増しています。

VUメーター

扶桑計測器社製のものを採用しているようです。今はどちらの廃止されているようですが、NHK規格BTS5703 又は JIS C1504に基づき製作されているようです。

情報が少なかったのですが、それぞれの規格では「入力周波数範囲」「入力インピーダンス」「入力レベル」「使用温度範囲」が規定されているようです。

※上図は、こちら(URL)から引用いたしました。

ATT(アッテネーター)

前面に操作ノブが追加され、入力信号のレベルに対し、0dBから-15dBで3dB刻みの6段階で減衰度を切り替える事が可能となっています。

さまざまな作業の段階でリファレンス(参考音源)との比較などを行う際でも、DAW上などで面倒な操作をしなくても即座に対応することができます。

この価格帯でアッテネーターが付いているVUメーターは、他にはないでしょう。

THRU OUT端子

大抵VUメーターを使用するのは最後段の出力部になってくると思いますが、本製品は背面にTHRU OUT端子が追加されています。このTHRU OUT端子は、FORENOの電源をオフにしても音をTHRUさせます。

これにより、直前のオーディオインターフェースなどにサブ出力がない場合でも、今使用している利用環境を大きく変えることなく取り入れることが可能です。

使用しても音質変化感じないほどのTHRU OUT端子なので、セッティングは非常に楽になります。

しかし、THRU OUT端子を使用する場合、THRU OUTの出力を上げるためにFORENOへの入力レベルを上げると、メーターが計測するレベルも必然的に変化するので注意が必要です。

これは非常に面倒なので、サブ出力がある場合は本機にサブ出力の信号を入力することで本線とは別系統として扱い、THRU OUT端子を使わずに「モニターへの入力レベルに依存しないような結線」をすると良いでしょう。

キャリブレーションコントロール

背面に、レベルの微調整用のキャリブレーションが用意されています。

これは、左右のメーターに対して1つずつ付いているので、個々のメーターを独立して調整することが可能です。

ラックタイプも存在

FORENOには、ラックタイプのものもあります。

中身の回路自体は変わりないようですが、2Uサイズのラックマウントに対応したものになっています。

HAYAKUMO FORENOの使い方

ここからは、「HAYAKUMO FORENO」の使い方です。

使い方に正解はないので、あくまで一例とお考え下さい。

①VUメーターを接続する

上記の「HAYAKUMO FORENOについて」でも記載しましたが、基本的には、以下の2通りの接続方法があると思います。

  • オーディオインターフェースの出力(モニター出力)からVUメーターのINPUTに接続し、THRU端子からモニタースピーカーに接続する。
  • オーディオインターフェースのサブ出力からVUメーターのINPUTに接続し、モニター出力とは別系統として扱う。

環境に応じて、どちらかの方法で接続してください。

個人的には、後者のTHRU OUT端子を使用しない方法です。

②リファレンスレベル/キャリブレーションを設定する

メーターの「0」の値をどの音量にするか?を設定することになります。言い換えれば、何dBの音を「0」の値とするか?です。

絶対条件として、0dBを超えた音はクリッピング(音割れ)が発生するために、0dBを下回らないようにしないといけません。

そして、ミックスなどをする際だけでなく、後工程の編集のための余地(ヘッドルーム)を残して編集しなければなりません。

この条件を考慮し、基本的にはリファレンスレベルとして「1kHz」の「正弦波(sin波)」で「-18dB」の信号をDAWから出力して、VUメーターの目盛りを「0」に合わせるようにします。

リファレンスレベルの出力の方法はDAWによって異なりますが、大抵はオーディオトラックでテスト信号を出力することになると思います。テスト信号の出力は、「テストジェネレーター」もしくは「テストオシレーター」で調べると良いかと思います。

また、「0」に合わせる際は、背面のキャリブレーションコントロールと、出力信号のレベルで調整するのが良いでしょう。

③リファレンス曲で調整

参考にするリファレンス曲を用いる場合に行います。

リファレンス曲を流した時に、VUメーターが「0」付近を指すように、アッテネーターを調整してください。

これが、リファレンス曲の音量になるので、以降のミックスやマスタリングを行う際の基準となります。

④基準とするトラックの音量を設定する

ここからは、以下の手順でミックスの作業を行っていきます。

  1. 「ドラムのキック」単体の音を調整する。

    • 「キック」は、「-3」辺りに設定すると後の設定がやり易いようです。
  2. 「ベース」単体の音を調整する。

    • 「-6」辺りに設定すると良いようです。
  3. 「キック」と「ベース」を鳴らして音量感を確認する。
  4. 「キック」と「ベース」を鳴らしながら、コード系の楽器を追加して調整する。

    • コード系の楽器を追加した時は、「0」辺りに設定すると良いと思います。
  5. リード系の楽器を追加して調整していく。
  6. ボーカルを追加し、音量を調整する。

この手順は、安定した低音成分があるトラックから調整して土台を作り、そこから曲に馴染むようなトラックを順次調整する流れになっています。

これは、もちろん一例で、最終的には好みに因るところが多いし、ジャンルによっても求められる各パートの音量は変わってきます。

参考にしたいリファレンス曲と比較し、「この曲のこのパートは、この音量で作られているんだ。」というように倣って調整するのが良いと思います。

⑤マスタリング後の仕上がりの音量を設定する

基本的には、これまでと同様です。

設定したアッテネーターの値で「0」に届くように調整していきます。

なお、この時のアッテネーターの値は、マスタリングの作業を行った後に、編集のための余地(ヘッドルーム)をどれだけ残したいか?によって決まってきます。

手順②におけるリファレンスレベルを「-18dB」で設定した場合に、アッテネーター(ATT)が「0dB」でメーターが「0」を指す時は、実際には「-18dB」を表していることになります。

言い換えれば、「18dB」分の値を上乗せされた値が、メーターの「0」になります。そのため、アッテネーター(ATT)によって、この「18dB」分の値を上乗せされた値をどれだけ削るか?と設定するということになります。

アッテネーター(ATT)とヘッドルームの関係は以下のようになるので、参考にしてみて下さい。

ATTヘッドルーム
0dB18dB
-3dB15dB
-6dB12dB
-9dB9dB
-12dB6dB
-15dB3dB 

この処理を適用した成果物が、「リファレンス曲のような分離感がない」「何か平べったい聴こえ方をしている」となった場合は、「ミキシング」「オーディオデータ自体へのエフェクトの見直し」などに一旦戻ってやり直したりするのが良いでしょう。

商品情報

本記事で紹介した商品です。

高精度、高信頼性、日本製のアッテネーター付きVUメーター

参考情報

類似する計測機器との違いを簡単にまとめておきます。

計測器説明
VUメーター相対的に聴感上の音量を計測する。
高域よりも、低域成分に対して敏感に反応しやすい。中域が一番人間の耳に近い形で触れてくれる。
ピークメーター瞬間最大音量を計測する。
これが0dBを超えるようになると、クリッピングが発生する。
RMSメーターある期間の平均的な音量を計測する。
そのため、人間の耳で聞いた時の音量近いが、低音成分の影響を受けやすい欠点がある。
ラウドネスメーター最も人間の耳に近い音の大きさを計測する。
これは、周波数や時間によって変化する人間の耳の特性に近くなるように補正されているためである。

まとめ

今回は、アナログのVUメーター:HAYAKUMO FORENOについてまとめてみました。

高価になりがちなVUメーターですが、価格も押さえており、見た目も機能も申し分ない機材だと思います。

特にミキシング/マスタリングを行うことが多い方は、参考にしていただけたら嬉しいです。

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