【参考情報】Fractal Axe-FXシリーズ から Kemperシリーズに置き換えてみた

初めて購入する時、どちらが良いだろうか・・・?と迷ったものに、ラックタイプのマルチプロセッサーがあります。

その代表格で、多くのプロも使用しているものが、「Kemper Profiling Amplifier シリーズ」と「Fractal Audio Systems Axe-FX シリーズ」です。

私は、今まで「Axe-FX シリーズ」を使用していたのですが、今回メインシステムを「Kemper シリーズ」に置き換えました。

今回は、その動機やそれぞれの違いについて記載してみようと思います。

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なぜ、当初Axe-FXシリーズを選んだ?

店員のススメもあったのですが、購入した動機には以下のようなことがありました。

ちなみに、当時は 現行(Axe-FXⅢ MarkⅡ)の3世代前にあたる「Axe-FXⅡ XL」を購入しました。

  • システムを簡略化したかった
    • 元々エフェクターボードだったが、煩雑で大型化してきた。。。
  • どこでも同じ音を出せる
  • 音作りにとことんこだわれる
    • エフェクト数が多い!
    • PCで動作するがあるため、音作りしやすい
    • 1つ1つのエフェクトの設定内容も細かくできる
    • 配線や接続順などの自由度が高い
  • 解像度の高く、クリアなエフェクトがある
    • 特に空間系エフェクトの奥行き感が素晴らしい
    • クリアすぎると感じる人もいるとは思います
  • 「ピッキングのニュアンス」や「ギターのボリュームを絞った時の音色の変化」が非常に自然
    • 奏者の力量を存分に活かせる
    • 奏者の粗が目立つ
  • 音の分離が良い

当時は、特に空間系の音作りが好きだったため、とことん音作りにこだわれるものが欲しかったのです。また、どこにでもある「Jazz Chorus」もしくは「ミキサーに直で入力」で良いと思っていたので、アンプ自体にもそれほどこだわることもなかったのですね。

ちなみに現行機では、処理能力が格段に上がりました。FXⅡ時代の「レイテンシー」「パッチ切り替え時の音切れ」などは気にならないレベルまで来ています。

どうして、Kemperシリーズに置き換えた?

そんな感じで、5年以上愛用していました。しかし、この度 メインのシステムを Kemper に置き換えることになりました。

その理由は、以下になります。

  • 歪み系に不満
    • あと一歩のところでどうも上手くいかず、馴染まない
    • アンプの歪みを試したくなった
  • 使ってみたいアンプ(Diezelとか)がない。
    • あくまでシミュレーターなので、搭載されているアンプモデルは決まっている
    • トーンマッチング機能はあっても、持っていないと使えないし、使っても「似てる音」になる。
    • エレキギター用ではなく、ベース用やアコースティック用のアンプも使いたくなった
  • Axe-FXシリーズだとファームアップデートで要求するスペックに、ハードの性能が追い付かなくなってくる
    • 処理が追い付かなくなると、ハード機器の置き換えが発生し得る
    • 現行機では、1台40万をはるかに超えているため、経済的な負担も大きくなる
  • システムを簡略化したい。
    • Fractal Axe-FXシリーズだと重量が重く、運搬が大変。。。
    • midiコントローラーなどが必要になり、荷物が多くなってしまう。
  • 空間系のコンパクトエフェクターで、満足いくものが手に入った。
  • Kemperのエフェクトもファームウェアアップデートを重ねることで数年前より、格段に良くなってきた。
    • Fractal Axe-FXシリーズには及ばずとも、搭載エフェクト数も多い
    • どうしても、満足しないのであれば、コンパクトで対応できる

1つ言えることは、Axe-FXシリーズの音質は素晴らしい!ということです。エフェクト音だけ取れば「エフェクト数」「カスタマイズ性」「解像度」などの点で Axe-FXシリーズから置き換えることはなかったです。

特にDSPによる空間系エフェクトのクリアな高解像度を現状のエフェクターで再現するのは、非常に苦労することになると思います。

ですが、他の持つ機材の関連などで、求めるものが変わってきたのです。

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なお、Kemperシリーズでは アンプのコピー(プロファイリング)を行います。内部処理でシミュレーションするわけではありません。そのため、個々のアンプ「音圧」「密度」を存分に再現できます。プロファイリングされたアンプは、常に世界中の誰かがすぐにアップロードしてくれています。有料のものもありますが、後述のRig Managerで利用できる無料のもので十分です。これにより、誰でも世界中の新旧のアンプを自由に使えることになります。正直、生のアンプヘッドやキャビネットを個人の所有物として持つ必要はありません。そもそも置くためのスペースや音を出せる環境の確保も難しいですしね。

操作性・機能・オプション品の違いは?

ここでは、置き換えて感じた操作性などの違いを少し記載していこうと思います。

パッチの呼び方

私は、Kemperではパッチの呼び方が少しわかりにくいので、初めは何を示しているのかわかりませんでした。

少し混乱したので、以下にまとめます。

Axe-FXシリーズ Kemperシリーズ
プリセット パフォーマンス
シーン Rig

midiコントローラーでもあるプログラマブルスイッチャー(ループスイッチャー)で言う所の「Bank」に相当する大きな塊のセットを Axe-FXシリーズでは「プリセット」、Kemperシリーズでは「パフォーマンス」と呼ぶようです。そして、プログラマブルスイッチャーの各フットスイッチで切り替えるものを Axe-FXシリーズでは「シーン」、Kemperシリーズでは「Rig」と呼びます。

エディタ

Axe-FXシリーズでは「Axe-Edit」、Kemperシリーズでは「Rig Manager」と呼ばれるものがあります。エフェクトの編集は、ハード本体のノブを使用しても設定することはできます。

  Axe-Edit Rig Manager
プレビュー
捕捉 Axe-Editは、ハード毎に専用のエディタが存在している Rig Managerは、全ハードに共通したエディタになっている

これらのエディタを使用することで、より細かい設定が可能になります。

なお、実際の設定内容は、Axe-Editの方がより細かい専門的な内容まで設定可能です。上記のリバーブの例では、Axe-Editでは「Basic」のコントロールが表示しています。他にも「Advanced」「EQ」「Modulation」「ducker」にシートが分かれていて、同じように多くのコントロールが存在します。

しかし、Axe-EditよりもRigManagerで設定できる内容が少ないと言っても、通常のコンパクトエフェクターなどのコントロールを超えるような量です。Rig Managerでのリバーブの一例を以下に示します。

以上から、エフェクトにこだわらない場合は、RigManagerの方がより適しているかもしれません。

エフェクトループのカスタマイズ性

基本的には、どちらも左から右へ信号が流れます。以下に基本的な違いを記載します。

Axe-Edit Kemperシリーズ
初期状態で使用できるエフェクト Axe-FXⅢ MarkⅡは、こちら
こちらをご覧ください
設定できる個数 84個(= 6 x 14)
  • アンプ部の前段:4個
  • アンプ部:1個
  • EQ部:1個
  • キャビネット部:1個
  • アンプ部の後段:4個
その他 「エディタ」欄に記載の例のように縦横無尽なレイアウトを作ることが可能です。
  • アンプ部の前段はモノラル接続、アンプ部の後段はステレオ接続になります。
  • 直列接続と並列接続を設定できますが、並列に設定できるエフェクターは、アンプ部の前段の中でも最前段の2つのみです。
  • 並列に接続されたルートは、アンプ部・キャビネット部を含む「前から3つ目以降のエフェクト」を通りません。

捕捉として、Axe-FXシリーズのAxe-Editでは、Send / Return や Input / Output などを駆使することで、右端から左端に飛ばすことも可能です。また、空間系などのエフェクトをパラレル2つ以上並べたり、原音を通すルートを作ったりすることができます。これにより、MIXノブと同じようなことを、各ラインのボリューム調整によりできるので、より太い音を作り上げることが可能です。この辺りは Tc electronics の G-Force でも行うようなテクニックです。

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ファームアップデート

ファームのアップデートには、どちらも専用のツールを使用することになります。KemperについてはUSBメモリを使用する方法もありますが、ツールを使用した方が手間が省けます。

Axe-FXシリーズ Kemperシリーズ
使うアプリ
  • Fractal Bot
  • Rig Manager(先述)
  • USBメモリ
更新方法
  1. Fractalのサイトから自分でダウンロードする
  2. Fractal Botでインポートする
  3. アップデート後は、手動でFXシリーズの再起動する
以下の手順を踏むと、自動で更新が始まり、アップデート後の再起動も自動で行われる。
USBを使用する際は、中身のデータが無くなってしまうので、注意すること。
【Rig Managerを使用時】

  1. Kemper シリーズとPCをUSBケーブルで接続する
  2. Rig Managerの[Help] > [Check for Software Updates] を押下する

【USBメモリを使用時】

  1. USBメモリをKemperに挿し、フォルダー構成をフォーマットする
  2. Kemperのサイトから自分でダウンロードする
  3. ダウンロードしたZipファイルを解凍する
  4. フォーマットしたUSBメモリ内の「OS Update」フォルダーに解凍したフォルダー内の「kaos.bin」を保存する
  5. 本体にUSBメモリを挿す
  6. 画面の指示に従って操作する
アプリで他に
できること
以下のデータのバックアップ/リストア

  • プリセットデータ
  • バンクデータ
  • キャビネットデータ
  • Rigの管理(Profelierへのインポート/エクスポートを含む)
  • 音色の編集(先述)
その他
  • Axe-FXシリーズで音色編集用のアプリとは別物
  • ファームウェアとアプリは、常に最新のものしか取得できない
  • Kemperシリーズを扱う上で必要なアプリはこれ1つで済む
  • ファームウェアとアプリは、過去のバージョンも取得することができる
  • Rig Managerは、Kemperのサイトにログインした状態でないとダウンロードすることができないそのため、アカウント登録が必要

専用リモートコントローラー

いずれの機種も専用のコントローラーが存在します。

可搬性で言えば、Kemperシリーズでは 電源アダプターがないのが大きいです。LANケーブルで接続し通信することで、より遅延が少ない操作ができるでしょう。

機能面で言えば、Axe-FXシリーズでは 好きなボタン配置を行うことが可能なのが便利だと思います。同じインターフェースでも各々が使いやすいようにカスタマイズできます。

Axe-FXシリーズ Kemperシリーズ
使用する媒体 FC-12 / FC-6 Profiler Remote
フットスイッチでできること
  • プリセット/シーン切替
  • エフェクトのダイレクトON / OFF
  • ルーパーコントロール
  • パフォーマンスの切り替え
  • LED表示付きのチューナー
  • 30秒までの演奏をループ可能なルーパー機能
  • タップ・テンポ
  • 各エフェクトのオン/オフ
特徴
  • FAS LINKⅡで接続する
  • 限られたボタンの中で、各ボタンの役割を変更できる
  • それぞれのスイッチにディスプレイが付いている
  • 付属のLANケーブル(7m)で本体と接続できる
  • 外部電源が不要
  • 外部midi機器の操作が可能(Profier経由)
  • 本体とセット売りも販売されている

なお、KemperのProfiler Remoteは、1つのエフェクトスイッチで複数のエフェクトのOn/Off を切り替えることができます。これは、Axe-FXシリーズで言う所のプリセット切り替えに当たるものです。以下の図も参照してみて下さい。見方を変えれば、Axe-FXシリーズよりも1つ階層が増えることになります。このことは、パッチの組み合わせ方法も大きく広がることにつながるでしょう。

 

商品リンク

DSPによるクリアな高音質を得られるマルチプロセッサー
あらゆるアンプのサウンドをコピーするマルチプロセッサー
パワーアンプの有無など様々なバリエーションが存在

まとめ

今回は、Fractal Axeシリーズから Kemperシリーズに置き換えた経験から、置き換えた動機と感じたことについてまとめてみました。

双方を使って思ったのは、色んな記事で書かれている通り、「Axe-FXシリーズ」はエフェクトによる音の作りこみをしたい人、「Kemperシリーズ」はアンプを重要視したい人、だと思います。

これから新規導入するかもしれない人や、置き換えを検討中のような人に対して、参考になれば嬉しいです。

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