Roland V-STAGE 76/88 レビュー~ピアノ・オルガン・シンセを一台に集約したステージキーボード~

Roland V-STAGEは、「ピアノ・エレピ・オルガン・シンセを一台でプロクオリティにまとめたい」というキーボーディストに向けて開発されたステージキーボードです。

また、「ピアノの音がリアルさに欠ける」「平べったい鍵盤では物足りない」という悩みも、V-STAGEなら解消できる仕様になっています。

本記事では、V-STAGEシリーズについて、製品説明と正直な意見をお伝えします。

ライブ中のミスを防ぐ!直感的な操作を可能にするV-STAGEの設計思想

V-STAGEの開発コンセプトは、「Always in the moment(常にその瞬間に)」です。

ここでいう「その瞬間」とは、「操作したいと思った瞬間」を指します。

そのとき、「やりたい操作を迷わず、実施できる」「画面操作や設定変更に集中させない」という思想がV-STAGEシリーズには盛り込まれています。

曲間の短い切り替えで焦ったり、リハーサル中に「あの設定どこだっけ」と画面を探し回ったりというストレスは、パフォーマンスそのものの質に直結します。

V-STAGEはそうしたワークフロー上の摩擦を徹底的に排除することを設計の核に据えた、まさに「弾き手のためのキーボード」です。

V-STAGEの核心:4種類の専用サウンドエンジンとシーン管理

V-STAGEの最大の特徴は、用途に合わせて最適化された4種類の専用サウンド・エンジンを搭載している点です。

それぞれのサウンド・エンジンは、明確に区分けされたコントロールによって管理されます。

各コントロールについては、別記事を記載予定です。

これにより、ピアノはピアノ、エレピはエレピ、オルガンはオルガンに必要な設定だけに集中して、妥協なく音を作りこめます。

また、専用エンジンとしたことは音色切り替え時の音切れ防止にも貢献しており、非常に使い勝手の良いキーボードとなっています。

そして、作られたプリセットは、「シーン」という単位で管理できます。

これらの内容について、以下でまとめます。

オルガン(Virtual Tone Wheel):オレンジ

オルガン・エンジンにはVirtual Tone Wheel音源を搭載しており、実際のトーン・ホイールの処理を忠実に再現しています。

例えば、「ペダル」「ロワー」「アッパー」の3パート構成でのハーモニック・バー・パートがあります。

また、パネル上のスライダー(ハーモニック・バー)でリアルタイムに音色をシェイピングでき、実際の操作と同じ感覚で利用できます。

さらに、新規開発のオーバードライブとロータリー・スピーカーなどのエフェクトも搭載しています。

「ロータリーを止めて演奏 ⇒ サビで回し始める」という操作が、ステージ上でもストレスなく実現できます。

アコースティック・ピアノ(V-Pianoテクノロジー):緑

アコースティック・ピアノには、Rolandが誇るV-Pianoテクノロジーを採用しています。

「サンプリング」ではなく、リアルさを追求した「モデリング」です。

仮想的な弦の共鳴やハンマー・アクション、響板素材までをモデリングされ、演奏時のタッチの強さや速さに対してよりリアルで繊細な反応をしてくれます。

搭載されているピアノ・サウンドは大きく以下の3つで構成されます。

  • グランドピアノ
  • アップライトピアノ
  • フェルトピアノ

なお、フェルトピアノは、V-STAGEが収録された初めての機材となる音源で、ビロードのような柔らかな質感が特徴です。

また、Piano Designer機能を使えば、明るさやステレオ幅、弦の共鳴音などのパラメーターを細かくカスタマイズできます。

「このホールのサウンドはもう少し明るくしたい」「共鳴をもう少し抑えたい」といった調整が可能なのも、「モデリング」ゆえの機能です。

エレクトリック・ピアノ(SuperNATURAL):青

エレピには、最新のSuperNATURAL音源を採用した、新開発の専用のサウンド・エンジンを搭載しています。

対応しているビンテージ・タイプは以下の4種類です。

タイプ系統音色のイメージ
Tine ローズ(Rhodes)系 ベルのような透明感のある音色
Reed ウーリッツァー(Wurlitzer)系 粘りのある、倍音豊かな音色
Digital DX(YAMAHA DX7のプリセットE.PIANO 1)系 80年代を象徴するクリアな音色
Clavinet クラビネット系 パーカッシブでファンキーな音色

このエンジンで特に注目したいのが、「SOUND LIFT」というコントロールです。

弱いタッチで弾いた時のデリケートなニュアンスを保ったまま、バンドの中でも埋もれない「抜ける音」を瞬時に作れます。

「ダイナミクスを大切にしながら、バンドに埋もれたくない」というEPプレイヤーに寄り添った機能です。

エフェクトも充実しており、トレモロ・アンプ・シミュレーター・MFX(マルチ・エフェクト)が各EPサウンドに最適化された形で用意されています。

シンセサイザー(ZEN-Core、名機のモデル・エクスパンション):赤

シンセ・エンジンには、Rolandのフラッグシップ音源ZEN-Coreを採用しています。

400種類以上のプリセット・トーンを搭載するだけでなく、外部のZEN-Core音源をインポートすることもできます。

購入後も無償でこれらの音源を追加できるのは、長く使い込むほど恩恵を感じられるポイントです。

さらに、「Roland Cloud」から、以下のModel Expansionを無償でダウンロードして使用することもできます。

いずれも歴史的名機のサウンドを再現したものなので、Rolandの音源が好きな方には非常に魅力的です。

Model Expansion元となる機種の特徴
JUPITER-81981年発売のポリフォニック・シンセ。
太く滑らかなパッドが特徴
JUNO-1061984年発売。
暖かみのあるコーラス・サウンドで人気
JX-8P1985年発売。
DCOによるクリアなサウンド
SH-1011982年発売。
モノフォニックのベース・リード向け
「Roland Cloud」は、ローランドの多くの製品が対応しているオンライン・コンテンツ・プラットフォームです。(参考リンク

音色(トーン)を管理するシーン機能

ステージでの運用において、特に重要なのが、音色の最小単位である「トーン」の管理です。

V-STAGEの「シーン機能」を使うことで、難しい設定をしなくても、演奏時の音色切り替えを加速させることができます。

V-STAGE 76/88における音色の管理は、以下の3段階の階層構造で行われます。

項目トーンシーンシーン・チェイン
階層 下位 中位 上位
保存内容 各サウンド・エンジンで生成された音 「トーン」を並べたもの 「シーン」を並べたもの
できること ピアノ、エレピ、オルガン、シンセの1つ1つの音色の設定 特定のフレーズで同時に鳴らしたい楽器の保存と切り替え 曲の展開に合わせた音色のセットの保存と切り替え
最大数 明記なし 512 128

上記の関係性から、以下の手順を踏むことが自然な流れになります。

  1. 個別の音色である「トーン」を設定する
  2. 「トーン」を組み合わせた各セクションの演奏状態を「シーン」として保存する
  3. 最終的にステージでの演奏順として「シーン・チェイン」を構成する
シーン切り替え時に音切れは?
シーン切り替え時に発生する「ブチッ」という音切れは、V-STAGEではしません。
Scene Remain機能が搭載しており、「シーン」を切り替える前の「トーン」に設定されている残響音などは維持されます。
そのため、不自然な切れ方をしないので、演奏上での安心感がまったく違います。

V-STAGE 76とV-STAGE 88は、鍵盤の違いが特徴的

V-STAGEには2つのモデルがありますが、サウンド・エンジンやエフェクトなどの機能面は両モデルで共通です。

違いは、鍵盤の仕様で、鍵盤数以外にも鍵盤そのものが大きく異なります。

ピアノが最優先ならV-STAGE 88、オルガン・シンセも同じくらい重要ならV-STAGE 76がおすすめですが、以下を参考にしてみてください。

項目V-STAGE 88 V-STAGE 76
鍵盤数 88鍵 76鍵
鍵盤の種類 ウェイテッド・ハンマーアクション鍵盤 セミウェイト・ウォーターフォール鍵盤
タッチ感
  • グランドピアノに近い
  • エスケープメント付き
  • 象牙調の手触り感
  • オルガンに近い
  • 柔らかい感覚
演奏性
  • 繊細なタッチの表現が可能
  • グリッサンドやトリルがしやすい
  • アフタータッチに対応
メインの演奏 ピアノ オルガン・シンセ・エレピ

XLRなど、あらゆる場面で困らないインターフェースを装備

V-STAGEは、ライブ・スタジオ・配信など、考えられる音楽シーンに対応するための入出力端子が揃っています。

※各インターフェースについては、別記事を記載予定です。

特徴説明
音声出力が充実メイン・ステレオ出力は、通常の「1/4インチ標準ジャック」の他に、「バランスXLR」にも対応しています。
そのため、ノイズに強く、かつ高音質な音を録音したり、PAに渡すことが可能です。
また、サブ出力も備えているため、使い方の幅が広がります。
マイク入力とボコーダーを搭載キーボードのコントロールでボリューム操作が可能な「XLRマイク入力」を搭載しています。
このマイクの信号には、専用リバーブやMFXも割り当てられる他、ボコーダー演奏にも対応しています。
USB-Cと連携USB-Cオーディオ/MIDIインターフェース機能を内蔵しており、コンピュータやモバイル・デバイスと直接連携できます。
Apple MainStageのコントロールにも対応しているため、MacBookと組み合わせた運用も想定されています。
外部MIDI機器接続MIDIコントローラー(Roland A-49など)を接続するための専用USBポートを2つ搭載しています。
手元の鍵盤だけでなく、ペダル・コントローラーや追加鍵盤を組み合わせたシステムアップにも対応できます。

V-STAGEのデメリット・注意点を正直に解説

ここまで、V-STAGEについて記載してきましたが、事前に知っておいた方が良い点ももちろんあります。

項目説明
価格の高さ「フラグシップモデルの一翼」であり、「プロ向けの設計」「4種類の専用エンジンを搭載」ということもあり、価格も高めです。
コスト重視であれば、FANTOMシリーズや別のRD-2000の方が合っている場合もあります。
重量「V-STAGE 76」は15.2kg、「V-STAGE 88」は21.8kgとキーボードとしては重い部類に入ると思います。
鍵盤などの構造上、電子ピアノのように重くなるのは仕方のないことかもしれません。
そのため、Rolandの純正品では、車輪付きの運搬用ケースも販売しています。
なお、FANTOMシリーズでは、88鍵モデルで15kg未満の重量になっています。
作曲系の機能V-STAGEはあくまで「ステージでの演奏」に特化しています。
DAW CONTROL機能はありますが、「MainStage」のみのため、Windowsユーザーは恩恵を受けられません。
シーケンサーやDAWを駆使した楽曲制作を行うならFANTOMシリーズの方が適しています。
FANTOMシリーズとの比較は、こちら(リンク)を参照ください。

商品情報

「4つの独立したサウンドエンジン」とオルガンに近いタッチの「新開発のセミウェイト・ウォーターフォール鍵盤」を搭載した76鍵のパフォーマンスキーボード
「4つの独立したサウンドエンジン」とピアノに近いタッチの「ウェイテッド・ハンマーアクション鍵盤(エスケープメント対応のアイボリーフィール鍵盤)」を搭載した88鍵のパフォーマンスキーボード。

まとめ:Roland V-STAGEはこんな人におすすめ

Roland V-STAGEは、特に鍵盤楽器の音色が素晴らしく、「ピアノもオルガンもシンセも、プロクオリティで一台にまとめたい」というニーズに、真正面から向き合った楽器です。

複数の音源カテゴリーをプロクオリティで一台にまとめた製品は多くありませんが、V-STAGEはその中でも専用エンジンの搭載という点で一線を画しています。

「価格」「重量」というデメリットを挙げましたが、個人的にはそのデメリットを上回る価値を持っていると考えています。

  • ピアノ・オルガン・シンセを一台でカバーしたい
  • よりリアルな音源を使いたい
  • セットリスト(シーン・チェイン)管理を効率化したい
  • 将来的に音源を拡張していきたい
  • 長く使っていきたい

こういった思いにこたえるのが、V-STAGEです。

逆に「音色はピアノだけで十分」「予算を抑えたい」「DAWを使った楽曲制作もしたい」という場合は、FANTOMシリーズやRDシリーズなどを検討した方が良いでしょう。

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